台湾の積欠工資墊償基金|会社が賃金を払えなくなったときの立替払い、対象は6か月未満の未払賃金と退職金・資遣費(6か月分の平均工資まで)、雇主は保険料に応じた費率で拠出
積欠工資墊償基金は、未払賃金と退職金・資遣費を立替払い。後者は6か月分の平均工資が上限。費率は0.15%以内。

台湾では、会社が廃業、清算、破産をして賃金を払えなくなったとき、従業員が賃金を受け取れなくなるリスクに備える仕組みとして、「積欠工資墊償基金」があります。基金は、雇主が拠出したお金で運営され、会社が払えない賃金や退職金、資遣費を、先に従業員に立替払いします。台湾の子会社を清算する場合や、資金繰りが厳しくなる場合に、日本の親会社が理解しておく必要がある制度です。この記事では、労働基準法第28条にもとづいて、優先して弁済される債権、基金の立替の対象と上限、雇主の拠出の仕組みと費率の上限、立替金の返還を整理します。会社の解散や清算の手続き全般は、別の記事(台湾子会社の解散・清算の流れ)で扱います。
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優先して弁済される債権
労働基準法第28条第1項は、雇主が廃業、清算、破産の宣告を受けたとき、労働者の次の債権は、第1順位の抵当権、質権、留置権で担保された債権と同じ順位で、債権の割合に応じて弁済されると定めています。弁済されなかった部分には、最優先で弁済を受ける権利があります。
- 労働契約にもとづく未払賃金のうち、6か月分に満たない部分。
- 労働基準法にもとづいて雇主が払っていない退職金。
- 労働基準法または労工退職金条例にもとづいて雇主が払っていない資遣費。
つまり、未払賃金は6か月分未満の部分が優先され、それを超える古い未払い分は、通常の債権として扱われます。
基金の立替払い
第28条第5項は、雇主が未払いにしている賃金、退職金、資遣費について、労働者が請求しても払われなかった場合は、積欠工資墊償基金が、第2項の規定にしたがって立替払いすると定めています。雇主は、基金から立て替えてもらった金額を、決められた期限内に基金へ返さなければなりません。
立替の範囲は、第2項に挙がっています。
| 項目 | 立替の範囲 |
|---|---|
| 未払賃金 | 第1項第1号の、6か月分に満たない未払賃金 |
| 退職金と資遣費 | 第1項第2号、第3号の退職金と資遣費。合計額は、6か月分の平均工資が上限 |
平均工資の計算は、別の記事(台湾の平均工資の計算方法)にあります。
雇主の拠出
第28条第2項は、雇主が、その月に雇った労働者の投保薪資の総額に、決められた費率をかけた額を、積欠工資墊償基金に納付すると定めています。
費率は、中央主管機関が、1万分の15の範囲(つまり0.15%以内)で案を作り、行政院が決定します(第4項)。基金が一定の金額まで積み上がると、費率を下げるか、徴収を一時停止します(第3項)。現在の費率は、この記事では確認していません。
基金の管理は、中央主管機関が設置した管理委員会が行い、徴収の事務は、労工保険の機関に委託できます(第6項)。基金の立替の手続き、徴収と管理の方法は、中央主管機関の辦法が定めます。
日本の親会社への影響
台湾子会社が基金の拠出を怠った場合の罰則は、第28条には書かれていません。この記事では、拠出の遅れに対する罰則は確認していません。
子会社が解散、清算する場合は、従業員への賃金、退職金、資遣費を、先に清算の手続きの中で払う必要があります。払えなければ、従業員は基金に請求でき、基金が立替払いした後は、会社が基金に返す義務を負います。親会社が、子会社のこの返済義務を、どのように負担するかは、親会社の保証や出資の契約によります。この記事では、親会社の責任の範囲は確認していません。
手順
- 台湾子会社の賃金の支払い状況と、退職金、資遣費の見込みを把握する。
- 雇主として、積欠工資墊償基金の拠出(労働者の投保薪資総額にかかる費率)を、納付していることを確認する。
- 清算や廃業の見込みがあるときは、未払賃金の額を整理する。
- 従業員が請求したのに払えない場合に、基金の立替払いの対象かを確認する。
- 立替を受けた場合は、決められた期限内に基金へ返す。
注意点
- 優先されるのは、未払賃金のうち、6か月分に満たない部分です。
- 退職金と資遣費の立替には、6か月分の平均工資という上限があります。
- 費率は変更されます。現在の費率は、労働部の公告で確認します。
よくある質問
会社が倒産して賃金が払われないとき、従業員は。
労働基準法第28条により、6か月分未満の未払賃金などは優先して弁済され、払われなければ、積欠工資墊償基金が立替払いします。
立替払いの上限は。
退職金と資遣費の合計は、6か月分の平均工資までです(第28条第2項第2号)。
基金の費率は、いくらですか。
中央主管機関が決めますが、1万分の15の範囲内(0.15%以内)です(第28条第4項)。
立替を受けた雇主は。
決められた期限内に、基金へ返さなければなりません(第28条第5項)。
出典
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第28條(2026-10-19 查證):積欠工資墊償基金,累積至一定金額後,應降低費率或暫停收繳。
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第2條(2026-10-19 查證):平均工資:指計算事由發生之當日前六個月內所得工資總額除以該期間之總日數所得之金額。