台湾の労工退職金(新制)|雇用主は月給の6%以上を提繳、対象は外国人のどこまでか
雇用主は毎月の賃金の6%以上を勞保局の個人専戸へ提繳。60歳から請求でき、15年以上なら月払いも選べる。
台湾の退職金は、勞工退休金條例にもとづく「新制」では、雇用主が毎月、従業員の賃金の一定割合を、従業員ごとの個人専戸に積み立てる方式です。日本企業が台湾の子会社で従業員を雇うときは、この提繳(積立)が雇用主の義務になります。駐在員の外国人にも適用されるのか、いつから受け取れるのか、怠ったときにどうなるのかを、条文にもとづいて整理します。
雇用主の義務|毎月6%以上
勞工退休金條例第6条は、雇用主が、この条例の対象になる労働者について、毎月、退職金を提繳し、勞工保險局(勞保局)が設ける個人専戸に積み立てると定めています。雇用主は、独自の退職金制度で、この制度を置き換えることはできません(同条第2項)。
提繳の額は、第14条第1項により、労働者の毎月の賃金の6%を下回ってはなりません。賃金の額は、主管機関が作る「月提繳分級表」の等級に当てはめて決まります(第14条第5項)。
労働者本人も、毎月の賃金の6%の範囲内で、自分で提繳できます。自分が提繳した分は、その年度の給与所得として課税しません(第14条第3項)。
雇用主が提繳率を調整できるのは、同じ雇用主の下で1年に2回までです。調整の月の月末までに、勞保局に調整表を通知し、通知の翌月1日から効力が生じます(第15条第1項)。
対象になる人
第7条第1項は、勞動基準法が適用される次の人を、この条例の対象としています。
- 本国籍の労働者
- 台湾に戸籍を持つ国民と結婚し、居留が許可されて台湾で働く外国人、大陸地区の人民、香港・澳門の居民
- その人が離婚した、または配偶者が死亡した後も、法令により台湾での居留と就労が認められる人
- 上記以外の外国人で、入出国及移民法にもとづき永久居留を許可され、台湾で働く人
外国專業人才延攬及僱用法第24条第1項は、専門的な仕事に就く外国專業人才と外国特定專業人才が、勞工退休金條例の退職金制度(新制)の対象になると定めています。勞動部は、2026年1月1日施行の同法により、永久居留の資格がなくても新制が適用され、2026年1月1日以後に新たに就職した専門人材は、就職日から新制の対象になると案内しています。改正前から同じ事業単位で働いていた人には、旧制の継続を書面で表明できる経過措置があり、その期限は2026年6月末ごろに終わっています。専門人材の詳細は、別稿の外国専門人材法の記事で整理しています。
日本から赴任する外国人のうち、専門的な仕事に就く外国專業人才は、外国專業人才延攬及僱用法第24条により、新制の対象になります。それ以外の外国人は、条例第7条第1項の列挙(台湾国民との婚姻による居留、永久居留の許可など)に当たるかが、強制適用の分かれ目になります。
実際に労働に従事する雇用主、自営業者、委任を受けて働く人、勞動基準法が適用されない労働者は、本人が望めば、自発的に提繳し、請求できます(第7条第2項)。
手続きの期限
雇用主は、労働者が入社、退職、復職、または死亡した日から7日以内に、リストを作って勞保局に通知し、提繳の開始または停止の手続きを行います(第18条)。
請求できる時期と方法
労働者は60歳になると、退職金を請求できます(第24条第1項)。
| 提繳の年資 | 請求の方法 |
|---|---|
| 15年以上 | 月退休金または一時金を選ぶ |
| 15年未満 | 一時金 |
年資は、実際に提繳された年資で数えます。年資が途中で途切れても、前後の年資は合算します(同条第3項)。月退休金か一時金かを選び、勞保局が支払を決定した後は、変更できません(同条第2項)。月退休金を受け取り始めるときは、一定の金額を一度に提繳して年金保険に加入し、平均余命を超えた後の給付に充てます(第25条)。
雇用主が怠ったときの責任
雇用主が、条例のとおりに月ごとの提繳や、満額の提繳をしないで、労働者に損害が生じた場合、労働者は雇用主に損害賠償を請求できます。この請求権は、労働者が離職した時から5年で消滅します(第31条)。
申告や停止の手続き、名簿の備え付け、書類の保存を怠り、期限を定めた改善の命令に従わない場合は、2万元以上10万元以下の罰金があり、改善されるまで毎月処罰されます(第49条)。
手順
- 従業員の国籍と居留の種類(台湾国民の配偶者、永久居留、外国專業人才など)を確認し、条例の強制適用かどうかを判断する。
- 入社日から7日以内に、勞保局へ提繳開始を通知する。
- 従業員の賃金を月提繳分級表の等級に当てはめ、賃金の6%以上を算出して毎月提繳する。
- 賃金や提繳率を変更するときは、調整月の月末までに通知する。賃金の調整は、2月から7月に調整した場合は8月末まで、8月から翌年1月に調整した場合は翌年2月末までに通知する(第15条第2項)。
- 退職や死亡の日から7日以内に、提繳の停止を通知する。
注意点
- 提繳の下限は6%ですが、実際の月給と、月提繳分級表の等級が異なる場合があります。分級表の最新の額は、本稿では確認していません。
- 賃金の申告が不実だった場合、勞保局は調べたうえで、職権で更正・調整できます(第15条第3項)。
- 条例の施行前から勞動基準法の適用を受けていた労働者の、旧制の年資の扱いは、第11条が定めています。
- 外国人の適用要件は、居留や婚姻の状況の確認が必要です。本稿は条文の整理で、個別の判断ではありません。
よくある質問
日本から派遣した駐在員にも、6%の提繳は必要ですか。
専門的な仕事に就く外国專業人才は、外国專業人才延攬及僱用法第24条により、2026年1月1日から新制の対象です。そのほか、台湾国民の配偶者として居留する外国人や、永久居留を許可された外国人も、条例第7条第1項の対象です。それ以外の外国人は、この項の強制適用には含まれていません。
提繳する個人専戸はどこにありますか。
勞工保險局が設ける個人専戸です(第6条第1項)。
何歳から受け取れますか。
60歳になると請求できます。提繳の年資が15年以上なら、月退休金と一時金から選べます。
雇用主が提繳を忘れたらどうなりますか。
労働者は損害賠償を請求できます。請求権は離職から5年で消滅します(第31条)。
出典
- 全國法規資料庫「勞工退休金條例」第6・7・14・15・18條(2026-10-17 查證):不得低於勞工每月工資百分之六。
- 全國法規資料庫「勞工退休金條例」第24・25・31・49條(2026-10-17 查證):勞工年滿六十歲,得依下列規定之方式請領退休金。