台湾の営業秘密法|保護される3要件、職務上の成果は雇用主のもの、意図のある不正な取得・使用・漏洩は5年以下の懲役または拘役(国外で使う目的は1年以上10年以下)、故意の侵害の損害賠償は最大3倍
営業秘密は非公知・経済価値・秘密保持措置の3要件で保護。不正利用の刑事罰は5年以下の懲役または拘役。

日本のメーカーや技術を持つ会社が、台湾の子会社や取引先と製造技術や顧客情報を共有するとき、台湾の「営業秘密法」で、どの情報が保護されるのか、どのように守れば保護の対象になるのかを知っておく必要があります。また、台湾の従業員が情報を持ち出した場合に、どのような請求や刑事告訴ができるのかも関係します。この記事では、営業秘密法の定義、職務上の研究開発の成果の帰属、侵害の類型、民事上の請求、刑事罰、法人の責任を、条文で整理します。離職後の競業禁止は、別の記事(台湾の離職後の競業避止特約)で扱います。具体的な訴訟の進め方は、この記事では扱いません。
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保護される3つの要件
営業秘密法第2条は、営業秘密を、方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計、その他の生産、販売、経営に使える情報で、次の3つの要件をすべて満たすものと定義しています。
- 一般に、その種の情報に関わる人に知られていない(非公知)。
- 秘密であることにより、実際の、または潜在的な経済的価値がある。
- 所有者が、合理的な秘密保持措置を取っている。
つまり、情報があるだけでは足りず、社内でアクセスを制限する、契約で秘密保持義務を課す、といった措置を取っていることが、要件の1つです。どの程度の措置が「合理的」とされるかは、条文に基準がありません。この記事では、個別の基準は確認していません。
職務上の成果の帰属
第3条は、従業員が職務上で研究、開発した営業秘密は、雇用主のものとします。ただし、契約に別の約束があれば、その約束によります(第1項)。従業員が職務外で研究、開発した営業秘密は、従業員のものです。ただし、雇用主の資源や経験を使った場合は、雇用主が合理的な報酬を払えば、その事業で使えます(第2項)。
出資して他人に研究、開発させた営業秘密の帰属は、契約で決めます(第4条)。
侵害になる行為
第10条第1項は、次の行為を営業秘密の侵害としています。
- 不正な方法で営業秘密を取得する。
- 不正な方法で取得された営業秘密であることを知っている、または重大な過失で知らずに、取得、使用、漏洩する(取得したあとで知って、または重大な過失で知らずに、使用、漏洩する場合を含む)。
- 法律行為(契約など)で取得した営業秘密を、不正な方法で使用、漏洩する。
- 法令で秘密を守る義務があるのに、使用、無断で漏洩する。
不正な方法とは、窃盗、詐欺、脅迫、賄賂、無断の複製、秘密保持義務への違反、他人に秘密保持義務への違反をそそのかすこと、などです(同条第2項)。
民事上の請求
被害者は、侵害の排除、侵害のおそれがあれば防止を請求でき、侵害行為で作られた物や侵害にだけ使う物の廃棄を請求できます(第11条)。
故意または過失で不法に営業秘密を侵害した者は、損害賠償の責任を負います(第12条第1項)。請求権は、請求権者が行為と賠償義務者を知ったときから2年で時効、行為のときから10年でも消滅します(同条第2項)。
賠償の額は、民法第216条にもとづく請求、または侵害者が得た利益の請求の、どちらかを選べます。侵害が故意なら、裁判所は、損害額以上の賠償を認められますが、証明された損害額の3倍までです(第13条)。
刑事罰
第13条の1は、自分や第三者の不法な利益のために、または営業秘密の所有者の利益を損なうために、営業秘密を不正に取得、使用、漏洩した者に、5年以下の懲役または拘役を科し、100万元以上1,000万元以下の罰金を併科できると定めています。未遂も罰します。
外国、中国大陸、香港、マカオで使う目的で同じ罪を犯した場合は、第13条の2により、1年以上10年以下の懲役で、300万元以上5,000万元以下の罰金を併科できます。
この罪は、第13条の1については、被害者の告訴がなければ起訴されません(第13条の3)。
法人の責任
第13条の4は、法人の代表者、代理人、従業員などが、業務の執行で第13条の1、第13条の2の罪を犯した場合、行為者を罰するほか、その法人に対しても、罰金を科すと定めています。ただし、法人の代表者が、犯罪の発生を防ぐために力を尽くしたときは、この限りではありません。
手順
- 守りたい情報が、3つの要件のどれに当たるかを整理する。
- アクセス制限、秘密保持契約など、合理的な秘密保持措置を取り、記録する。
- 従業員の職務発明に関する契約で、成果の帰属を明記する。
- 外注先に研究開発を頼む場合は、成果の帰属を契約で決める。
- 侵害が疑われるときは、証拠を保存し、民事の請求と刑事告訴の両方を検討する。
- 請求権の時効(知ったときから2年)を管理する。
注意点
- 秘密保持措置を取っていないと、営業秘密として保護されない可能性があります。
- 刑事告訴は、被害者が告訴する必要があります(第13条の1は親告罪)。
- 外国で使う目的の場合は、刑罰が重くなります。
よくある質問
営業秘密として保護される条件は。
非公知であること、経済的価値があること、所有者が合理的な秘密保持措置を取っていること、の3つです(営業秘密法第2条)。
従業員が開発した技術は、会社のものですか。
職務上の研究開発の成果は、雇用主のものです。契約に別の約束があれば、その約束によります(第3条第1項)。
営業秘密を侵害されたとき、いつまでに請求しますか。
損害賠償の請求権は、知ったときから2年、行為のときから10年で消滅します(第12条第2項)。
刑事罰は。
5年以下の懲役または拘役で、100万元以上1,000万元以下の罰金を併科できます。国外で使う目的なら、1年以上10年以下の懲役です(第13条の1、第13条の2)。
出典
- 全國法規資料庫「營業秘密法」第2・3・4・10條(2026-10-19 查證):所有人已採取合理之保密措施者。
- 全國法規資料庫「營業秘密法」第11・12・13・13-1・13-2・13-3・13-4條(2026-10-19 查證):處五年以下有期徒刑或拘役,得併科新臺幣一百萬元以上一千萬元以下罰金。