台湾の職災保険(労災)と雇用主の義務|保険料は全額雇用主負担、加入は就職当日、未加入の罰金2万〜10万元
雇用主は就職当日に職災保険に加入させ、保険料は全額負担。未加入の罰金は2万〜10万元。
台湾で従業員を雇う雇用主は、通常の労工保険や健康保険とは別に、仕事中の事故や職業病に備える「職災保険」への加入が義務づけられています。勞工職業災害保険及び保護法(職災保険法)が、加入の対象、保険料の負担、給付、雇用主の義務、罰則を定めています。この記事では、この法律の条文にもとづいて、日本企業の台湾子会社が押さえる点を整理します。個別の労災認定の判断は扱いません。
加入の対象と時期
職災保険法第6条第1項は、15歳以上の次の労働者を、雇用主を加入単位として、被保険者として加入させると定めています。
- 執業証照を持ち、法に従い登記を済ませ、税籍を設けた雇用主、または中央主管機関が雇用許可を出した雇用主に雇われる者。
- 法により公教人員保険に入れない政府機関や学校の職員。
第11条は、加入の対象に外国籍の人員も含まれると定めています。
第12条第1項は、加入単位が、労働者の到職の当日に、リストを作って保険者に通知し、加入の手続きをすると定めています。離職の当日には退保の手続きをします(同条第3項)。
労工保険は雇用する人数が5人以上の事業所が対象でしたが、職災保険法第6条第1項には、人数の条件は書かれていません。
保険料の負担(第19条)
第19条第1号は、第6条などの被保険者について、実際に労働に従事する雇用主本人の場合を除き、保険料の全額を加入単位(雇用主)が負担すると定めています。従業員に保険料を負担させることはできません。
給付の種類(第26条)
職災保険の給付は、次の5種類です。
- 医療給付
- 傷病給付
- 失能給付
- 死亡給付
- 失踪給付
主な給付の水準
傷病給付(第42条)。 職業傷病で働けなくなり、元の賃金が得られず、治療中の場合に、働けなくなった日から数えて4日目から請求できます。給付は、最初の2か月は平均月投保薪資の全額、3か月目以降は70%で、15日ごとに支給され、最長2年です。
失能給付(第43条)。 失能の程度が一定の評価に当たる場合に、年金として、完全失能は平均月投保薪資の70%、重度の失能は50%、部分失能は20%が支給されます。
失踪給付(第55条)。 作業中の事故による失踪では、平均月投保薪資の70%が、3か月ごとに支給されます。
雇用主のその他の義務
職災保険法は、保険のほかに、次のような雇用主の義務を定めています(罰則から読み取れる範囲)。
- 職業災害にあった労働者が元の仕事に戻れるように協助し、または適切な仕事に配置すること(第67条第1項)。
- 労働契約を終了するとき、勞動基準法の予告の規定に従うこと(第84条第2項)。
- 労働者に、普通傷病假、留職停薪、公傷病假を与えること(第88条)。
- 退職金や資遣費を、勞動基準法や勞工退職金条例の基準と期限で支払うこと(第86条)。
罰則
| 違反 | 罰金 | 条文 |
|---|---|---|
| 従業員の加入・退保の手続きをしない | 2万元以上10万元以下。期限を定めて改善を命じ、改善しなければ回ごとに処罰 | 第96条 |
| 雇用主が負担すべき保険料を被保険者に負担させる、必要な文書を備え置かない | 2万元以上10万元以下。期限付き改善、回ごとの処罰 | 第97条 |
| 投保薪資を過少・過大に申告する、期限内に調整を通知しない | 2万元以上10万元以下 | 第98条 |
| 元の仕事への復帰の協助をしない、調査を拒む、予告をしない、傷病假を与えない | 5万元以上30万元以下。期限付き改善、回ごとの処罰 | 第95条 |
| 退職金や資遣費を基準・期限どおりに払わない | 30万元以上150万元以下。期限付き給付、回ごとの処罰 | 第93条 |
罰金を受けた雇用主は、名称、負責人の氏名、処分の内容などが公表されます(第100条第1項)。
手順
- 従業員の到職の当日に、職災保険に加入させる手続きをする(外国籍の従業員を含む)。
- 保険料は全額、会社が負担する。
- 離職の当日に、退保の手続きをする。
- 従業員が職業傷病にあったら、元の仕事に戻れるように協助するか、適切な仕事に配置する。
- 傷病假や留職停薪の請求に応じ、勞動基準法の予告の規定を守る。
注意点
- 職災保険の保険料を、従業員に負担させると、罰金の対象です。
- 保険の効力は、到職の当日から始まります(第13条第1項)。到職当日に加入の手続きをしないと、第96条の罰金の対象です。
- 給付の請求権の時効などは、この記事では扱いません。
- 保険料率は、事業の種類ごとに決まります。この記事では扱いません。
よくある質問
台湾で従業員を1人雇ったら、職災保険に入れますか。
入れます。職災保険法第6条第1項には、雇用する人数の条件が書かれていません。
保険料は誰が負担しますか。
雇用主が全額負担します(第19条第1号)。
外国人の従業員も加入しますか。
外国籍の人員も含まれます(第11条)。
加入しないと、どうなりますか。
2万元以上10万元以下の罰金で、期限を定めて改善を命じられます。改善しなければ、回ごとに処罰されます(第96条)。
出典
- 全國法規資料庫「勞工職業災害保險及保護法」第6・11・12・19條(2026-10-17 查證):第六條至第十條所定參加本保險之人員,包括外國籍人員。
- 全國法規資料庫「勞工職業災害保險及保護法」第26・42・43・55・93〜100條(2026-10-17 查證):處新臺幣二萬元以上十萬元以下罰鍰,並令其限期改善。