台湾の責任制(労働時間規定の適用除外)|労働基準法第84条の1は勞雇の書面合意と主管機関への核備が条件、適用外は第30・32・36・37・49条の5条のみ
責任制は公告された職種のみ。書面合意と核備が条件で、適用外は第30・32・36・37・49条の5条だけ。

台湾の子会社で「管理職には残業代を払わなくてよい」「営業職は責任制だから時間管理は不要」と説明を受けたことがある日本人の駐在員は、少なくないはずです。しかし、台湾の労働基準法で、労働時間の規定から外せるのは、条文が決めた条件を満たした場合だけです。この記事では、労働基準法第84条の1と、同法施行細則第50条の1にもとづいて、責任制と呼ばれる仕組みの対象、必要な手続き、適用が外れる5つの条文、外れない義務を整理します。職種ごとの公告の一覧や、個別の契約書の書き方は、この記事では扱いません。
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責任制の根拠条文
労働基準法第84条の1は、中央主管機関(勞動部)が核定して公告した次の職種の労働者について、勞雇の双方が、労働時間、例假、休假、女性の夜間労働を別に約定でき、当地主管機関に報告して核備を受ければ、第30条、第32条、第36条、第37条、第49条の制限を受けないと定めています。
| 号 | 対象 |
|---|---|
| 第1号 | 監督・管理人員、または責任制専業人員 |
| 第2号 | 監視性または間歇性の仕事 |
| 第3号 | その他、性質が特殊な仕事 |
ここで大事なのは、「中央主管機関が核定して公告した」という条件です。職名が管理職であるだけでは、条文の対象になりません。
用語の意味
施行細則第50条の1は、第84条の1の語を次のように説明しています。
- 監督・管理人員:事業の経営と管理を担当し、一般の労働者の採用、解雇、労働条件を決める権限を持つ、主管クラスの人。
- 責任制専業人員:専門知識や技術で、決まった任務を完成させ、その成否に責任を負う人。
- 監視性の仕事:一定の場所で、監視を主とする仕事。
- 間歇性の仕事:仕事そのものが、間をおいて行われる形の仕事。
必要な手続き
第84条の1の第2項は、約定は書面でしなければならず、労働基準法の基準を参考にして、労働者の健康と福祉を損なってはならないと定めています。第1項は、当地主管機関への核備も求めています。口頭の合意や、就業規則だけでは、条文が求める形になりません。
外れる5つの条文
適用が外れるのは、次の5条です。
| 条 | 内容(概要) |
|---|---|
| 第30条 | 正常な労働時間(1日8時間、1週40時間)など |
| 第32条 | 延長労働の上限(1日12時間、月46時間など) |
| 第36条 | 例假と休息日 |
| 第37条 | 国定の休日 |
| 第49条 | 女性の午後10時から翌朝6時の労働の制限 |
この5条が条文に挙がっているすべてです。第84条の1は、これ以外の条文には触れていません。たとえば、加班費の計算を定める第24条や、特別休暇を定める第38条は、第84条の1が挙げる5条に入っていません。
罰則との関係
第79条は、第30条第1項から第3項、第32条、第34条から第41条、第49条第1項などに違反した場合、2万元以上100万元以下の罰鍰と定めています。第84条の1の要件を満たさないまま、責任制と称して労働時間を管理せずに、これらの条文に反すると、罰則の対象になりえます。事業の規模や、違反した人数、違反の状況により、罰鍰は最高額の2分の1まで加重されることもあります(第79条第4項)。
なお、第79条の列挙に、第84条の1そのものは含まれていません。
手順
- 対象の従業員の仕事が、中央主管機関の公告した職種に当たるかを確認する。
- 職種が公告に当たる場合は、労働時間、例假、休假、女性の夜間労働について、勞雇の書面の約定を作る。
- 約定は、労働基準法の基準を参考にし、健康と福祉を損なわない内容にする。
- 約定を、当地主管機関に報告して、核備を受ける。
- 第24条の加班費など、第84条の1が挙げていない条文の義務は、そのまま残るかを確認する。
注意点
- 管理職という肩書きだけでは、適用除外になりません。公告された職種であることが前提です。
- 約定を書面にしていない、または核備を受けていない場合は、第84条の1の適用を主張できない可能性があります。
- 公告の具体的な職種は、勞動部の公告で確認します。この記事では、公告の一覧を確認していません。
- 適用が外れるのは5条で、これ以外の条文は、別に確認が必要です。
よくある質問
部長職には、責任制が自動的に適用されますか。
自動的には適用されません。公告された職種であること、書面の約定、当地主管機関の核備が、条文の求める条件です(労働基準法第84条の1)。
責任制の場合、労働時間の上限はなくなりますか。
第30条、第32条など5条の制限は受けませんが、約定は、労働基準法の基準を参考にして、労働者の健康と福祉を損なわない内容でなければなりません(同条第2項)。
責任制と、加班費の関係は。
第84条の1が適用除外とする条文に、加班費を定める第24条は挙がっていません。加班費の扱いは、個別に確認が必要です。
違反するとどうなりますか。
第30条第1項から第3項、第32条などに違反した場合は、2万元以上100万元以下の罰鍰になります(第79条第1項第1号)。
出典
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第84條之1(2026-10-19 查證):前項約定應以書面為之,並應參考本法所定之基準且不得損及勞工之健康及福祉。
- 全國法規資料庫「勞動基準法施行細則」第50條之1、「勞動基準法」第79條(2026-10-19 查證):責任制專業人員:係指以專門知識或技術完成一定任務並負責其成敗之工作者。