台湾の離職後の競業避止特約|有効にする4つの要件、期間は最長2年、合理的な補償が必要、1つでも欠けると約定は無効
離職後の競業禁止は4要件が揃うときだけ有効。補償が必要で、期間は最長2年。1つ欠けると無効。

営業秘密を扱う従業員が、辞めた後に競合他社へ移ることを、雇用契約で制限したい場面があります。台湾では、労働基準法第9条の1が、離職後の競業禁止の約束を結べる要件を、細かく定めています。条件を満たさない約定は、無効になります。この記事では、第9条の1の4つの要件、補償の考え方、期間の上限、無効になる場合を、条文で整理します。在職中の兼業や、営業秘密の保護は、別の記事で扱います。
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競業禁止が有効になる4つの要件
第9条の1第1項は、次の4つのすべてに当てはまらない場合、雇主は、労働者と離職後の競業禁止の約束をしてはならないと定めています。
| 番号 | 要件 |
|---|---|
| 1 | 雇主に、保護すべき正当な営業上の利益がある |
| 2 | 労働者の職位や職務が、雇主の営業秘密に接触し、または使うことができるものである |
| 3 | 競業禁止の期間、地域、職業活動の範囲、就職先の相手が、合理的な範囲を超えていない |
| 4 | 労働者が競業をしないことで受ける損失に対して、雇主が合理的な補償をする |
つまり、すべての従業員に、一律に競業禁止の約束をさせることはできません。営業秘密に関わる職位の人に限られ、期間や範囲も合理的でなければなりません。
補償の考え方
第2項は、第4号の合理的な補償に、労働者が在職中に受け取る給付は含まれないと定めています。つまり、在職中の給与や手当を、競業禁止の補償として数えることはできません。離職後に、競業をしないことの代わりに払う別の金額が必要です。
補償の額と支払い方法には、勞動基準法施行細則第7条の3に基準があります。合理的な補償は、次の4件を総合して考えます。
- 毎月の補償額が、離職時の1か月の平均工資の50%以上であること。
- 補償額が、離職後の競業禁止の期間の生活に足りること。
- 補償額が、競業禁止の期間、区域、職業活動の範囲、就職先の範囲によって受ける損失に相当すること。
- その他の事項。
補償は、離職後に一括で前払いするか、月ごとに払うと約定します(同条第2項)。
競業禁止の約定は、書面で行い、第9条の1第1項第3号と第4号の内容を詳しく書き、雇主と労働者が署名または押印して、各1部を持ちます(施行細則第7条の1)。
約定が無効になる場合
第3項は、第1項の4つの要件のうち1つでも違反する約定は、無効と定めています。
期間の上限
第4項は、離職後の競業禁止の期間を、最長で2年と定めています。2年を超える約定は、2年に短縮されます。つまり、3年と書いても、2年に縮まります。たとえば、離職後18か月と定める場合は、上限の24か月以内なので、期間の点では範囲に収まります。(算術は本稿のものです。)
営業秘密法との関係
競業禁止の約束とは別に、営業秘密を持ち出して使う行為は、営業秘密法で処罰される場合があります。営業秘密法第13条の1は、自分や第三者の不法な利益のために営業秘密を不正に取得、使用、漏洩した者に、5年以下の懲役または拘役を科し、100万元以上1,000万元以下の罰金を併科できると定めています。外国などで使う目的の場合は、第13条の2により、1年以上10年以下の懲役で、300万元以上5,000万元以下の罰金を併科できます。刑事責任は、競業禁止の約束の有無とは別に問われます。営業秘密を侵害した者への民事の損害賠償は、知ったときから2年、行為のときから10年で請求権が消えます(営業秘密法第12条)。賠償額は、故意なら、証明された損害額の3倍までです(第13条)。詳しい内容は、別の記事(台湾の営業秘密法)で扱っています。
就業規則や契約書に入れるときの注意
- 競業禁止の約束を、入社時の雇用契約書に書く場合も、第9条の1の要件が当てはまります。
- 約束の対象を、営業秘密に関わる職位に絞り、職位ごとに内容を分けると、要件2に沿います。
- 禁止する期間、地域、職業活動の範囲、就職先の相手は、具体的に書きます。
- 離職後の補償を、金額と支払いの時期を決めて書きます。
手順
- 競業禁止を結ぶ職位を、営業秘密に接触する職位に絞る。
- 守りたい営業上の利益(営業秘密、取引先の情報など)を整理する。
- 禁止の期間(2年以内)、地域、職業活動の範囲、就職先の相手を、具体的に決める。
- 離職後に払う補償の金額と支払い方法を決める。
- 契約書に、4つの要件を満たす内容を書き、本人に説明して署名してもらう。
- 既存の契約書に、2年を超える期間や、補償のない競業禁止がないか点検する。
注意点
- 補償がない競業禁止の約束は、要件4を満たさず、無効です。
- 在職中の給与を補償に当てることはできません。
- 期間の上限の2年は、離職後の期間です。
よくある質問
台湾で、離職後の競業禁止は認められますか。
4つの要件を満たす場合に限り、認められます(労働基準法第9条の1第1項)。
補償なしの競業禁止は有効ですか。
無効です。雇主が、競業をしないことで受ける損失に対し、合理的な補償をする必要があります(同項第4号、第3項)。
期間は何年まで有効ですか。
最長2年です。2年を超える約定は、2年に縮まります(第4項)。
在職中の給与を補償として扱えますか。
扱えません。補償に、在職中に受け取る給付は含まれません(第2項)。
出典
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第9-1條(2026-10-19 查證):離職後競業禁止之期間,最長不得逾二年。逾二年者,縮短為二年。
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第9條(2026-10-19 查證):勞動契約,分為定期契約及不定期契約。