台湾の雇用契約|試用期間に法定の上限はなく、契約に約定する13項目、離職後の競業禁止は書面で最長2年
契約に約定する項目は13。試用期間は合理的な期間を約定でき、終了は勞基法の規定に従う。
台湾子会社で従業員を採用するときの雇用契約は、日本の労働契約書と同じ感覚で作ると、台湾の法令に合わない点が出てきます。勞動基準法とその施行細則は、契約に約定する事項、配置転換の原則、離職後の競業禁止の条件を定めています。試用期間については、条文の上限がなく、勞動部の見解が基準になります。この記事では、これらの条文と、勞動部の案内にもとづいて、雇用契約で確認する点を整理します。給与の額や契約書の雛形は扱いません。
契約に約定する13項目(施行細則第7条)
勞動基準法施行細則第7条は、労働契約に、勞基法の関係規定に従って、次の事項を約定すると定めています。
| 号 | 項目 |
|---|---|
| 1 | 仕事の場所と、従事する仕事 |
| 2 | 始業・終業の時間、休憩、休日、例假、休息日、請假、交替制の交替 |
| 3 | 賃金の決め方、調整、計算、精算、支払いの日と方法 |
| 4 | 契約の締結、終了、退職 |
| 5 | 資遣費、退職金、その他の手当や賞与 |
| 6 | 労働者が負担する宿食費と作業用具の費用 |
| 7 | 安全衛生 |
| 8 | 労働者の教育と研修 |
| 9 | 福利 |
| 10 | 災害補償と一般の傷病の補助 |
| 11 | 守るべき規律 |
| 12 | 賞罰 |
| 13 | その他、労使の権利義務に関する事項 |
試用期間
試用期間の長さについて、勞基法の条文に上限は見当たりません。勞動部の「勞工之試用有無期間之限制」の回答(2026年9月3日更新)は、労使が、契約の誠実の原則に反しない範囲で、合理的な試用期間を約定できると説明しています。ただし、その試用期間の中または満了のときに、雇用主が労働契約を終了する場合は、勞基法第11条、第12条、第16条、第17条と、勞工退職金条例第12条の規定に従う必要があります。
つまり、試用期間であるという理由で、予告や資遣費が不要になるわけではありません。勞基法第16条の予告期間は、継続勤務が3か月以上1年未満で10日前、1年以上3年未満で20日前、3年以上で30日前です。資遣費は、新制の労働者で勤続1年あたり平均賃金の0.5か月分、最高6か月分で、契約の終了から30日以内に払います(勞工退職金条例第12条)。詳しくは別稿で整理しています。
労働契約の種類(第9条)
勞基法第9条第1項は、労働契約を定期契約と不定期契約に分け、継続的な仕事は不定期契約にすると定めています。定期契約が満了した後、労働者が働き続けて雇用主がすぐに反対しない場合などは、不定期契約とみなされます(同条第2項)。
労働者の名簿(第7条)
勞基法第7条は、雇用主が、労働者の氏名、性別、生年月日、本籍、学歴、住所、身分証番号、到職の年月日、賃金、労工保険の加入日、賞罰、傷病などを登記する「勞工名卡」を備え置くよう定めています。この名簿は、労働者の離職後5年まで保管します。
配置転換の原則(第10条の1)
雇用主が労働者の仕事を調動するときは、労働契約の約定に反してはならず、次の原則に合う必要があります。
- 企業経営上必要で、不当な動機や目的がないこと。
- 賃金やその他の労働条件を、不利に変更しないこと。
- 調動後の仕事が、労働者の体力と技術で勝任できること。
- 勤務地を遠くに調動するときは、雇用主が必要な協力をすること。
- 労働者とその家庭の生活の利益を考慮すること。
離職後の競業禁止(第9条の1、施行細則第7条の1)
勞基法第9条の1は、次のすべてに当たらない限り、雇用主は離職後の競業禁止の約定を結んではならないと定めています。
- 雇用主に保護すべき正当な営業の利益があること。
- 労働者の職位や職務が、雇用主の営業秘密に接触または利用できること。
- 競業禁止の期間、地域、職業活動の範囲、就業の相手が、合理的な範囲を超えないこと。
- 競業をしないことで労働者が受ける損失に対し、雇用主が合理的な補償をすること。
この補償には、在職中に受け取る給付は含まれません。これらのいずれかに違反する約定は無効です。競業禁止の期間は、最長2年で、2年を超えるものは2年に短縮されます。
施行細則第7条の1は、離職後の競業禁止の約定を書面で行い、期間と補償の内容を詳しく記載し、雇用主と労働者が署名または押印して、それぞれ1通ずつ持つよう定めています。
手順
- 契約書に、施行細則第7条の13項目をそろえる。
- 契約の種類(定期か不定期か)を決める。継続的な仕事は不定期契約にする。
- 試用期間を設ける場合は、合理的な期間を契約書に書き、終了のときは勞基法の手続きに従うことを前提にする。
- 勞工名卡を作成し、離職後5年まで保管する。
- 配置転換の可能性がある場合は、契約の約定の範囲と、第10条の1の原則を確認する。
- 離職後の競業禁止を約定する場合は、書面で、期間、地域、補償の内容を詳しく記載する。
注意点
- 試用期間中でも、雇用主が契約を終了するには、勞基法の予告と資遣費の規定に従います。
- 競業禁止の期間は最長2年です。2年を超えると、2年に短縮されます。
- 勞工名卡は、離職後5年の保管が必要です。
- 契約書を書面で作る一般的な義務の有無は、この記事では確認していません。
よくある質問
台湾の試用期間は最長何か月ですか。
勞基法の条文に上限は見当たりません。勞動部は、労使が合理的な期間を約定できると説明しています。
試用期間中なら、解雇に予告は要りませんか。
要ります。試用期間の中または満了のときの終了も、勞基法第11条、第12条、第16条、第17条などに従います。
離職後の競業禁止は、どのくらいの期間まで有効ですか。
最長2年です。補償などの条件を満たさない約定は無効です(第9条の1)。
労働者の名簿はいつまで保管しますか。
労働者の離職後5年までです(第7条)。
出典
- 全國法規資料庫「勞動基準法施行細則」第7・7-1條(2026-10-17 查證):勞動契約應依本法有關規定約定下列事項。
- 勞動部「勞工之試用有無期間之限制?」(更新2026-09-03)(2026-10-17 查證):勞雇雙方在不違背契約誠信原則下,得自行約定合理之試用期間。
- 全國法規資料庫「勞動基準法」第7・9・9-1・10-1條(2026-10-17 查證):離職後競業禁止之期間,最長不得逾二年。