台湾の労使紛争の調停手続き|権利事項と調整事項に分け、調停は労務提供地の主管機関に申請、調停人は10日以内に調停案、争議行為は原則として調停不成立の後だけ
労使紛争は労務提供地の主管機関に調停を申請。調停人は指派から7日以内に開始、10日以内に調停案を出す。

台湾の子会社で、従業員が賃金の未払いや解雇の有効性を争う、あるいは、工会が労働条件の変更を求めるといった紛争が起きたとき、まず使われるのが、「労資争議処理法」の手続きです。この法律は、紛争の種類を分け、調停、仲裁、裁決という手続きを定めています。日本の本社の担当者が、台湾の労使紛争に対応するときは、この手続きの流れと期限を把握しておく必要があります。この記事では、労資争議処理法にもとづいて、紛争の種類、調停の申請先と期限、調停成立の効力、調停期間中の禁止事項、罷工の条件を整理します。訴訟の手続きや、不当労働行為の裁決の詳細は、この記事では扱いません。
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2種類の労使紛争
第5条は、労資争議を、次の2つに分けています。
| 種類 | 内容 | 処理の手続き |
|---|---|---|
| 権利事項の争議 | 法令、団体協約、労働契約にもとづく権利義務についての争い | 調停、仲裁、裁決(第6条第1項) |
| 調整事項の争議 | 労働条件を維持するか変更するかについての争い | 調停、仲裁(第7条第1項) |
権利事項の争議では、裁判所は、必要に応じて労働法廷を設けます。労働者側が訴訟や仲裁を起こすとき、中央主管機関が適切な扶助を与えることがあります(第6条第2項、第3項)。
調整事項の争議の労働者側の当事者は、工会でなければなりません。ただし、工会に入っていないが同じ主張をする労働者が10人以上いる場合、または、従業員が10人未満の事業所で、工会に入っていない労働者の3分の2以上が同じ主張をする場合は、労働者側の当事者になれます(第7条第2項)。
調停の申請
第9条第1項は、労使の当事者の一方が調停を申請するとき、労働者側の当事者が労務を提供している地の、直轄市または県・市の主管機関に、調停申請書を出すと定めています。主管機関は、必要があるとき、職権で調停に付すこともできます(同条第3項)。
調停人による調停
主管機関が調停人を指派して調停する場合は、調停申請書を受けてから3日以内に指派します。調停人は、事実を調べ、指派の日から7日以内に調停を始めます(第12条第1項、第2項)。調停を始めてから10日以内に、調停案を作ります(同条第5項)。
調停委員会による調停
調停委員会で行う場合は、委員は3人または5人で、主管機関の代表1人が主席になります。主管機関が1人または3人を指派し、労使の当事者が各1人を選びます(第13条)。主管機関は、申請書を受けた後、当事者にその旨を通知します。当事者は、通知を受けた日から3日以内に、それぞれ調停委員を選びます。選ばなければ、主管機関が指定します(第14条)。
調停の成立
調停案に、労使の双方が同意して調停記録に署名したときは、調停が成立します(第19条)。当事者が調停案に同意しなければ、調停は不成立です(第20条)。次の場合も、不成立とみなされます(第21条)。調停委員会の主席が会議を招集したのに、続けて2回、出席した委員が過半数に届かなかった。調停案を作れなかった。
調停が成立したときは、争議の双方の当事者の間の契約とみなされます。当事者の一方が工会のときは、団体協約とみなされます(第23条)。
調停が不成立のとき、当事者は、共同で、主管機関に仲裁を申請できます(第25条第1項)。
調停・仲裁・裁決の期間中の禁止
第8条は、調停、仲裁、裁決の期間中、雇主は、その争議を理由に、廃業、操業停止、労働契約の終了、そのほか労働者に不利な行為をしてはならないと定めています。労働者側も、その争議を理由に、罷工や争議行為をしてはなりません。
争議行為と罷工
第53条は、労資争議は、調停が不成立となった後でなければ、争議行為ができず、権利事項の争議では罷工ができないと定めています。ただし、雇主または雇主団体が、中央主管機関の裁決で、工会法第35条(不当労働行為)や団体協約法第6条第1項に違反すると認定されたときは、工会はこの法律にもとづいて争議行為ができます(同条第2項)。工会は、会員による直接、無記名の投票で、全会員の過半数の同意がなければ、罷工を宣言できません(第54条第1項)。
教師や、国防部の機関で働く労働者は、罷工できません。自来水、電力、ガス、病院、銀行間の資金決済などの事業では、必要なサービスの条項を労使が約束した後でなければ、工会は罷工を宣言できません(第54条第2項、第3項)。
手順
- 紛争の内容が、権利事項か、調整事項かを整理する。
- 労働者側が労務を提供している地の主管機関に、調停申請書を出す(または、主管機関の職権による調停に応じる)。
- 調停人の指派(3日以内)、調停の開始(7日以内)、調停案(10日以内)の流れを確認する。
- 調停の期間中は、争議を理由に解雇などの不利益な行為をしない。
- 調停案に同意するか決める。同意すれば契約とみなされる。
- 不成立なら、仲裁の申請や、訴訟を検討する。
注意点
- 調停の申請先は、労働者が働く場所の主管機関です。
- 調停が成立すると、契約と同じ効力を持ちます。
- 罷工の宣言には、全会員の過半数の同意が必要です。
よくある質問
労使紛争の調停は、どこに申請しますか。
労働者側が労務を提供している地の、直轄市または県・市の主管機関です(労資争議処理法第9条第1項)。
調停は、いつまでに始まりますか。
調停人は、指派の日から7日以内に調停を始め、開始から10日以内に調停案を作ります(第12条)。
調停が成立したら。
争議の双方の当事者の間の契約とみなされます(第23条)。
調停中に解雇してもよいですか。
その争議を理由にした解雇は禁止されています(第8条)。
出典
- 全國法規資料庫「勞資争議處理法」第5・6・7・8・9條(2026-10-19 查證):勞資争議當事人一方申請調解時,應向勞方當事人勞務提供地之直轄市或縣(市)主管機關提出調解申請書。
- 全國法規資料庫「勞資争議處理法」第12・13・14・19・20・21・23・25・53・54條(2026-10-19 查證):勞資争議經調解成立者,視為争議雙方當事人間之契約。