台湾の董事の義務と責任|忠実義務と善管注意義務、違法な決議で会社に損害が出ると、決議に参加した董事は賠償責任、実質的に業務を執行・指示する人も董事と同じ責任
董事は忠実義務を負う。違法な決議で会社に損害が出れば、参加した董事は賠償責任。提訴請求は継続6か月以上の持株1%から。

日本の本社から、台湾の子会社の董事に就く人は、台湾の公司法に基づく義務と責任を負います。董事会の決議に参加したことが、会社の損害につながった場合の賠償、競業をする場合の許可、親会社が子会社の運営に指示を出す場合の責任は、台湾の公司法の規定に従います。この記事では、公司法の第8条、第23条、第193条、第194条、第209条、第214条、第215条を、条文で整理します。董事の人数や任期は、別の記事で扱います。個別の紛争での責任の判断や、役員賠償責任保険は、この記事では扱いません。
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誰が「負責人」か
公司法第8条第1項は、有限公司と股份有限公司の負責人を、董事と定めています。第2項により、経理人、清算人、臨時管理人、股份有限公司の発起人、監察人、検査人なども、職務の範囲で負責人です。
第3項は、董事でない人でも、実質的に董事の業務を執行する人、または、会社の人事、財務、業務の運営を実質的に支配して、董事に業務の執行を指示する人は、董事と同じ民事、刑事、行政罰の責任を負うと定めています。ただし、政府が、経済の発展、社会の安定、公共の利益のために、政府が指名した董事に出した指示は、対象外です。
日本の親会社が、台湾の子会社の運営に細かく指示を出している場合、この第3項が当てはまるかを検討する必要があります。具体的にどの程度の関与で当たるかは、条文には書かれていません。この記事では、判断の基準を確認していません。
忠実義務と善管注意義務
第23条第1項は、負責人が、忠実に業務を執行し、善良な管理者の注意義務を尽くす義務を定めています。違反して会社に損害が出た場合は、損害賠償の責任を負います。
第2項は、負責人が業務の執行で法令に違反し、他人に損害を与えた場合は、会社と連帯して賠償する責任を負うと定めています。
第3項は、第1項に違反して、自分や他人のために行為をしたとき、株主総会が決議して、その行為による利益を会社の利益とみなせると定めています。ただし、利益が生じてから1年を過ぎた場合は、この限りではありません。
違法な董事会決議
第193条第1項は、董事会が業務を執行するとき、法令、定款、株主総会の決議に従うと定めています。第2項は、董事会の決議がこれに違反して、会社に損害が出たとき、決議に参加した董事は、会社に賠償責任を負うと定めています。ただし、異議を表明した董事で、議事録や書面の声明で証明できる者は、責任を免れます。
つまり、反対の意見がある董事は、議事録に残すか、書面の声明を出す必要があります。単に反対した、という事実だけでは、証明が難しくなります。
第194条は、董事会の決議が法令や定款に違反する行為である場合、継続して1年以上、株式を持つ株主は、董事会に対して、その行為の停止を求められると定めています。
競業の許可
第209条第1項は、董事が、自分や他人のために、会社の営業の範囲内の行為をするとき、株主総会に、その行為の重要な内容を説明して、許可を取る必要があると定めています。許可の決議には、複数の株主がいる場合、発行済株式の3分の2以上を代表する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成が必要です(同条第2項)。董事が違反したときは、株主総会が決議して、その行為による利益を会社の利益とみなせます。利益が生じてから1年を過ぎるとできません(同条第5項)。
親会社から派遣された董事が、親会社の事業のために、子会社の営業の範囲内の行為をする場合は、この許可が必要かどうかを確認します。
株主による責任追及
第214条は、継続して6か月以上、発行済株式の1%以上を持つ株主が、書面で監察人に、会社を代表して董事を訴えるよう請求できると定めています。請求から30日以内に監察人が訴えを起こさなければ、その株主が会社のために訴えを起こせます。裁判所は、被告の申立てで、株主に担保を出させることがあります。株主が訴える場合、裁判費のうち60万元を超える部分は、当面徴収されません。
訴えが事実無根だった場合、その株主は、訴えられた董事が被った損害を賠償します。訴えの事実が真実だった場合は、訴えられた董事が、起訴した株主が受けた損害を賠償します(第215条)。
手順
- 董事に就く人が、自分が公司法上の負責人にあたることを確認する。
- 董事会の議案が、法令、定款、株主総会の決議に合うか、事前に確認する。
- 反対する議案があれば、議事録に異議を記録するか、書面で声明を出す。
- 同じ営業の範囲の行為をする場合は、株主総会で内容を説明し、許可を得る。
- 親会社が子会社の運営に指示を出す場合、責任の及ぶ範囲を、法務の担当者と整理する。
注意点
- 異議を述べても、議事録に残らなければ、免責の証明が難しくなります。
- 競業の許可を得ずに行為をしても、利益を会社のものとみなされるのは、利益が生じてから1年以内です。
- 違反の態様ごとの刑事責任の内容は、この記事では扱いません。
よくある質問
台湾の子会社の董事は、どんな義務を負いますか。
忠実に業務を行う義務と、善良な管理者の注意義務です(公司法第23条第1項)。
違法な董事会決議に参加したら。
会社に損害が出れば、決議に参加した董事は賠償責任を負います(第193条第2項)。
異議を述べておけば、責任を免れますか。
異議を述べた事実を、議事録や書面の声明で証明できれば、免れます(第193条第2項)。
董事でない親会社の担当者が指示を出している場合は。
実質的に董事の業務を執行する人、または、会社の人事、財務、業務の運営を実質的に支配して、董事に業務の執行を指示する人は、董事と同じ責任を負います(第8条第3項)。
出典
- 全國法規資料庫「公司法」第8・23條(2026-10-19 查證):公司負責人應忠實執行業務並盡善良管理人之注意義務。
- 全國法規資料庫「公司法」第193・194・209・214・215條(2026-10-19 查證):經表示異議之董事,有紀錄或書面聲明可證者,免其責任。