台湾の関税の課税価格の決め方|取引価格が基本、運賃・保険料・ロイヤルティを加算、親子間の取引は議決権5%以上で「特殊関係」
課税価格は輸入港までの運賃・保険料を含む取引価格。議決権5%以上の関係は特殊関係。

日本の本社が台湾の子会社へ製品を送るとき、台湾の税関が関税を計算する基礎になるのが、「完税価格」(課税価格)です。インボイスに書いた価格がそのまま課税価格になるわけではなく、運賃、保険料、ロイヤルティなどが加算されます。また、本社と子会社のような関係は、「特殊関係」として、取引価格が使えないと判断されることがあります。この記事では、関税法の第29条から第36条の1、第39条、第13条にもとづき、課税価格の考え方、加算される費用、特殊関係の範囲、取引価格が使えない場合の順序、事前審査と事後稽核を整理します。関税率そのものと、輸入の営業税の計算は、別の記事で扱います。
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課税価格の基本
関税法第29条第1項は、従価税の対象になる輸入貨物の課税価格を、その貨物の取引価格を根拠に決めると定めています。取引価格とは、貨物が輸出国から中華民国へ売られるときに、実際に支払った、または支払うべき価格です(同条第2項)。
加算される費用
実際の支払価格に含まれていない場合は、次の費用を課税価格に加算します(第29条第3項)。
- 買い手が負担する手数料(佣金を含む)、容器・包装の費用。
- 買い手が売り手に無償または割引で提供して、売り手が貨物の生産や販売に使った物品と役務の費用。部品、原材料、金型、型枠、消耗した材料、国外での設計や開発の費用などを、合理的に配分した金額です。
- 取引条件で買い手が払うロイヤルティと報酬。
- 買い手が輸入貨物を使ったり処分したりして、売り手に払う金額。
- 輸入港までの運賃、積み下ろしと運搬の費用。
- 保険料。
日本の本社が、台湾の子会社に製造機械や金型を無償で貸したり、設計図を提供したりしている場合は、第2号の加算に当たるかを確認する必要があります。加算額は、客観的で、数字で測れる資料にもとづく必要があります。資料がない場合は、第29条で課税価格を決められないものとみなされます。
特殊関係と、取引価格が使えない場合
第30条第1項は、次の場合には、取引価格を課税価格の根拠にできないと定めています。
- 買い手の、貨物の使用や処分に制限がある(法令の制限や、転売地域の制限、価格に大きな影響のない制限は除く)。
- 取引に条件があり、価格が定まらない。
- 買い手の使用や処分による収益の一部が売り手に帰属し、その金額が不明確である。
- 売り手と買い手が「特殊関係」にあり、取引価格に影響している。
第30条第2項は、特殊関係を、次のとおり定めています。
| 号 | 関係 |
|---|---|
| 1 | 一方が他方の経理人、董事、監察人である |
| 2 | 同じ事業の共同経営者(組合員)である |
| 3 | 雇用関係がある |
| 4 | 一方が他方の議決権株式の5%以上を、直接または間接に持ち、または支配している |
| 5 | 一方が他方を直接または間接に支配している |
| 6 | 売り手と買い手が、第三者に直接または間接に支配されている |
| 7 | 売り手と買い手が、共同で第三者を支配している |
| 8 | 配偶者、または3親等以内の親族である |
日本の親会社が台湾の子会社の議決権株式を5%以上持つ場合は、第4号に当たります。ただし、特殊関係に当たることは、取引価格を一律に使えなくする規定ではありません。第30条第1項第4号は、特殊関係があって、かつ取引価格に影響したときに、取引価格を根拠にできないと定めています。
取引価格が使えない場合の順序
取引価格で課税価格を決められないとき、税関は、次の順序で課税価格を決めます。まず、同じ貨物の取引価格(第31条)。それも使えなければ、類似の貨物の取引価格(第32条)。さらに第33条から第35条の方法に進みます。
納税義務者は、書面で、税関に課税価格の決め方の説明を求められます(第36条)。税関の回答は、書面で行われます。
事前審査
納税義務者や代理人は、貨物が輸入される前に、財政部関務署に、実際の支払価格に、第29条第3項で加算すべき費用が含まれているかの事前審査を申請できます(第36条の1)。回答は書面です。審査結果が変更された場合、納税義務者が、すでに契約を結んで取引を進めており、変更後の結果を適用すると損失が出ることを証拠で示せば、書面通知を受けた日の翌日から90日を限度に、元の結果の適用の延長を申請できます。審査の結果に不服があれば、貨物の輸入の前に、覆審を申請できます。
外貨の換算
外貨建ての価格は、新台湾ドルに換算します。換算のレートは、財政部関務署が、外国為替市場のスポットレートを参考にして、定期的に公告します(第39条)。
事後稽核
税関は、貨物の放行の翌日から6か月以内に通知すれば、放行の翌日から2年以内に、事後稽核を実施できます。稽核の結果、税金の還付や追徴が必要になった場合は、放行の翌日から3年以内に行います(第13条第1項)。稽核では、納税義務者や関係人に、記録、文書、会計帳簿、電子データの提供を求められます。拒否や妨害はできません(同条第2項)。
手順
- 日本の本社と台湾の子会社の関係が、第30条第2項の特殊関係に当たるかを整理する。
- インボイスの価格に、運賃、保険料、手数料、ロイヤルティ、無償提供した部品・金型の費用などを加算する必要があるかを確認する。
- 加算の根拠となる資料(契約書、請求書)を保存する。
- 判断が難しい場合は、輸入の前に、関務署へ事前審査を申請する。
- 外貨の換算には、関務署の公告のレートを使う。
- 事後稽核に備え、輸入関係の記録を保存する。
注意点
- 課税価格の計算で、運賃や保険料を含めるかどうかは、条文では第29条第3項の第5号、第6号で定められています。インボイスに含まれていなければ加算します。
- ロイヤルティの扱いは、取引条件に関わる場合に限られます(第3号)。
よくある質問
台湾の関税の課税価格は、どう決まりますか。
輸出国から台湾に売られたときの、実際の支払価格(取引価格)が基本です。運賃や保険料などが含まれていなければ加算します(関税法第29条)。
日本の本社と子会社の取引は、取引価格を使えますか。
議決権株式の5%以上を持つ関係などは特殊関係です。特殊関係があって取引価格に影響していると、その価格は課税価格の根拠にできません(第30条)。
事前に課税価格の確認はできますか。
貨物の輸入の前に、関務署へ事前審査を申請できます(第36条の1)。
税関の事後稽核は、いつまで行われますか。
放行の翌日から6か月以内に通知すれば、放行の翌日から2年以内です(第13条第1項)。
出典
- 全國法規資料庫「關稅法」第29・30・31・32條(2026-10-19 查證):從價課徵關稅之進口貨物,其完稅價格以該進口貨物之交易價格作為計算根據。
- 全國法規資料庫「關稅法」第13・36・36-1・39條(2026-10-19 查證):納稅義務人或其代理人得於貨物進口前,向財政部關務署申請預先審核。