台湾の商事仲裁の基本|仲裁法は書面の仲裁協議が必要、判断は確定判決と同一効力、撤銷の訴えは判断書の送達から30日以内、外国の仲裁判断は裁判所の承認裁定で執行名義に
仲裁協議は書面が必要。仲裁判断は確定判決と同一効力。撤銷の訴えは判断書の送達から30日以内。

台湾の取引先との契約に、紛争を仲裁で解決する条項を入れる日本企業は、台湾の仲裁法が、仲裁協議の形式、仲裁人の選び方、判断の効力、裁判所の関与をどう定めているかを知っておく必要があります。この記事では、台湾の仲裁法の第1条から第5条、第9条、第25条、第37条、第38条、第40条、第41条、第47条から第50条にもとづいて、仲裁協議の要件、訴訟との関係、仲裁人の選定、判断の効力と執行、撤銷の訴え、外国仲裁判断の承認を整理します。仲裁機関の個別の規則や、費用の額は、この記事では扱いません。
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仲裁協議
第1条第1項は、現在または将来の紛争について、当事者が仲裁協議を結び、1人または奇数の複数の仲裁人で仲裁廷を構成して仲裁することを約定できると定めています。対象の紛争は、和解することが法律で認められるものに限られます(同条第2項)。仲裁協議は、書面でしなければなりません(同条第3項)。文書、有価証券、書簡、電報などの通信で、仲裁の合意が認められるときは、仲裁協議が成立したものとみなされます(同条第4項)。
仲裁協議は、一定の法律関係と、その法律関係から生じる紛争についてのものでなければ、効力がありません(第2条)。契約の中の仲裁条項の効力は、独立して判断されます。その契約が成立していない、無効、取り消し、解除、終了となっても、仲裁条項の効力には影響しません(第3条)。
訴訟との関係
当事者の一方が仲裁協議を守らず、別に訴えを起こした場合、裁判所は、相手方の申立てにより、訴訟手続きの停止を裁定し、原告に、一定の期間内に仲裁に付すよう命じます。ただし、被告が本案の口頭弁論をしている場合は除きます(第4条第1項)。原告が期間内に仲裁に付さないときは、訴えは却下されます(同条第2項)。
仲裁人の選定
仲裁人は、自然人でなければなりません(第5条第1項)。仲裁協議に仲裁人も選定方法も定めがない場合は、双方がそれぞれ仲裁人1人を選び、その2人が共同で第3の仲裁人(主任仲裁人)を推薦します(第9条第1項)。仲裁人が選定されてから30日以内に主任仲裁人を推薦しないときは、当事者が、裁判所に選定を申し立てられます(同条第2項)。
当事者が、仲裁機関で扱うと約定した場合は、その仲裁機関が仲裁人を選定します(同条第4項)。
仲裁の言語
国際的な仲裁事件では、当事者が、仲裁手続きで使う言語を約定できます。ただし、仲裁廷または当事者の一方は、関連文書に別の言語の翻訳を付けるよう求められます(第25条第1項)。
判断の効力と執行
第37条第1項は、仲裁人の判断は、当事者の間で、裁判所の確定判決と同一の効力を持つと定めています。
仲裁判断で強制執行するには、原則として、裁判所に執行裁定を申し立てる必要があります。ただし、金銭、代替物、有価証券の一定数量の給付、または特定の動産の給付を内容とする判断で、当事者双方が、書面で、裁判所の裁定なしで強制執行できると約定している場合は、直接、強制執行できます(同条第2項)。
次の場合、裁判所は、執行裁定の申立てを却下します(第38条)。
- 仲裁判断が、仲裁協議の対象の紛争と無関係である、または範囲を超えている(その部分を除いても成り立つ場合は、残りは除く)。
- 理由を付けるべきなのに、付けていない(仲裁庭が補正した場合は除く)。
- 仲裁判断が、法律上許されない行為を命じている。
撤銷の訴え
第40条は、当事者が、相手方に、仲裁判断の撤銷の訴えを提起できる場合を挙げています。仲裁協議が成立しない、または無効、当事者が陳述の機会を与えられていない、仲裁廷の構成または手続きが協議や法律に違反している、などです。
撤銷の訴えは、仲裁地の地方裁判所が管轄します(第41条第1項)。判断書が交付または送達された日から、30日の不変期間内に提起します(同条第2項)。第40条第1項第6号から第9号の事由があり、当事者の過失ではなく、期間内に主張できなかった場合は、撤銷の原因を知った時から数えます。ただし、仲裁判断書の作成の日から5年を過ぎると、提起できません。
外国の仲裁判断
第47条は、台湾の外で作成された仲裁判断、または台湾内で外国の法律にもとづいて作成された仲裁判断を、外国仲裁判断と定めています。外国仲裁判断は、裁判所が承認の裁定をすると、当事者の間で確定判決と同一の効力を持ち、執行名義になります(同条第2項)。
承認の申立てには、仲裁判断書の正本または認証付きの写し、仲裁協議の原本または認証付きの写し、外国の仲裁法規や規則の全文を添付します。外国語の文書には、中国語訳が必要です(第48条)。
次の場合、裁判所は、承認の申立てを却下しなければなりません(第49条第1項)。
- 承認や執行が、台湾の公共の秩序または善良の風俗に反する。
- 台湾の法律では、その紛争が仲裁で解決できない。
また、判断地国などが台湾の仲裁判断を承認しない場合は、裁判所は、申立てを却下できます(同条第2項)。
手順
- 契約に、仲裁協議(書面)を入れる。対象の法律関係と紛争の範囲を明確にする。
- 仲裁人の人数、選定方法、仲裁地、言語、仲裁機関を決める。
- 紛争が起きたら、仲裁に付す旨を、書面で相手方に通知する。
- 仲裁判断の後、執行が必要なら、裁判所に執行裁定を申し立てる。
- 撤銷の訴えを考える場合は、判断書の送達から30日以内に提起する。
注意点
- 仲裁協議は書面が必要です。ただし、通信の内容から合意が認められる場合は、成立したとみなされます。
- 撤銷の訴えの期間は、30日の不変期間です。
- 外国の仲裁判断を台湾で執行するには、裁判所の承認裁定が必要です。
よくある質問
契約が無効になったら、仲裁条項も無効ですか。
仲裁条項の効力は独立して判断され、契約が無効でも影響しません(仲裁法第3条)。
仲裁判断で、そのまま強制執行できますか。
原則として、裁判所の執行裁定が必要です。当事者が書面で約定していれば、金銭などの給付に限り、直接、強制執行できます(第37条)。
仲裁判断に不服なときは。
判断書の送達から30日以内に、撤銷の訴えを提起できます(第41条)。
日本の仲裁判断は台湾で使えますか。
外国の仲裁判断は、裁判所の承認の裁定を受けて、執行名義になります(第47条)。
出典
- 全國法規資料庫「仲裁法」第1・2・3・4・5・9・25條(2026-10-19 查證):仲裁協議,應以書面為之。
- 全國法規資料庫「仲裁法」第37・38・40・41・47・48・49條(2026-10-19 查證):應於判斷書交付或送達之日起,三十日之不變期間內為之。