「台湾の人件費は日本より安い」と言われることがありますが、職種・地域・経験で給与水準は大きく違い、さらに給与以外の会社負担があります。このページでは、平均額を当てはめるのではなく、自社の条件で人件費を見積もる方法を紹介します。
人件費の内訳
| 項目 | 内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 月給 | 最低賃金(2026年:月額29,500元)を下回らないこと | 求人サイトの掲載例、人材紹介会社 |
| 賞与 | 年終獎金(年末賞与)は慣行として期待されることが多い | 業界慣行、労働契約 |
| 労働保険(雇用主負担) | 等級表に基づく保険料の一部 | 労働部労工保険局の保険料計算 |
| 健康保険(雇用主負担) | 投保金額に基づく保険料の一部 | 衛生福利部中央健康保険署 |
| 労工退休金 | 雇用主が個人口座に拠出 | 労工保険局 |
| 残業代 | 想定残業時間×割増率 | 労働基準法 → 採用の基本 |
| 採用費 | 人材紹介手数料、求人広告 | 各社見積もり |
| その他 | 福利厚生、研修、PC等 | 社内規定 |
見積もりの手順
- 職種と人数を決める(例:営業1名、事務1名)
- 月給レンジを、求人掲載例や人材紹介会社の情報で調べる(調べた日付と出典をメモ)
- 保険・退職金の雇用主負担を、公式の保険料計算ツールや等級表で計算
- 年額に換算:月給×12+賞与+雇用主負担×12+採用費
- 日本円換算は、使ったレートと日付を記録
注意点
- 給与水準は台北と他都市で違う
- 日本語人材は給与が高めになる傾向がある、と言われることがあるが、職種・スキルによる(自社で求人情報を確認)
- 労働保険・健康保険の保険料率は改定されることがある
次にすること
会社全体の年間維持費と合わせて試算しましょう → 台湾法人の維持費
法令で決まっている人件費のルール
見積もりの各項目のうち、法令で金額や割合が決まっているものを補足します。保険料の料率や等級表は改定されることがあるため、本稿では数字を載せていません(未確認)。計算するときは、労働部労工保険局と衛生福利部中央健康保険署の最新の表を使ってください。
最低賃金
- 給与は会社と労働者が話し合って決めますが、基本工資(最低賃金)を下回ることはできません(労働基準法第21条)。
- 2026年1月1日からの最低賃金は、月額29,500元・時給196元です(労働部公告)。
- ジェトロは、2027年1月から月額の最低賃金が4.75%引き上げられると伝えています(ジェトロ「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」、2026年10月6日更新分)。金額は労働部の正式な公告で確認してください。
2027年以降も続ける計画なら、最低賃金に近い給与の職種は、引き上げ後の金額で試算しておきます。
退職金の積立
雇用主は、労働者ごとに労工保険局の個人口座へ、毎月退職金を積み立てます(勞工退休金條例第6条)。積立額は、労働者の毎月の賃金の6%を下回ることはできません(同条例第14条)。見積もりでは「月給×6%以上」を雇用主負担として入れます。
職業災害保険
労働者職業災害保険及保護法第6条により、15歳以上の労働者で、登記や稅籍登記をしている雇用主に雇われる人は、雇用主を投保単位として職業災害保険に加入します。保険料の率は未確認のため、労工保険局の資料で確認してください。
残業代の割増率
労働基準法の正常な労働時間は、1日8時間・週40時間までです(第30条)。残業代は次の割合で上乗せします(第24条)。
| 区分 | 上乗せの割合(平日の時給に対して) |
|---|---|
| 平日の残業 最初の2時間 | 3分の1以上 |
| 平日の残業 続く2時間 | 3分の2以上 |
| 休息日の労働 最初の2時間 | 1と3分の1以上 |
| 休息日の労働 2時間を超えた分 | 1と3分の2以上 |
残業は正常な時間と合わせて1日12時間まで、残業時間は原則1か月46時間までです(第32条)。見積もりで残業時間を想定するときは、この上限の内側で考えます。
たとえば平日の時給が196元の人が平日に2時間残業した場合、1時間あたり196元×(1+3分の1)=約261元以上になり、2時間で約523元以上です。時給の計算方法(月給からどう割り出すか)は、労働契約と労働部の解釈で確認してください。
計算例:退職金の積立だけを足した場合
月給30,000元の1名を雇う場合、退職金の積立は月30,000元×6%=1,800元以上、年間で21,600元以上です。給与と合わせると、年間で少なくとも30,000元×12+21,600元=381,600元になります。これに、労働保険・健康保険・職業災害保険の雇用主負担、賞与、残業代、採用費を足したものが、見積もりの総額です。保険料は最新の等級表で計算し、計算に使った表の日付を記録しておきましょう。
休日と有給休暇
- 労働者には7日ごとに2日の休み(例假1日・休息日1日)があります(第36条)。
- 例假・休息日・祝日・特別休暇の日も、賃金は雇用主が通常どおり払います。労働者の同意を得て祝日に働いてもらう場合は、賃金を2倍にします(第39条)。
- 特別休暇(年次有給休暇)は、勤続6か月以上1年未満で3日、1年以上2年未満で7日、2年以上3年未満で10日、3年以上5年未満で毎年14日、5年以上10年未満で毎年15日です(第38条)。
賞与の扱い
労働基準法施行細則第10条では、年終獎金(年末賞与)や三節の節金、紅利は、経常的な給与に含まれないものとされています。ただし、支給するかどうかや金額は会社の規定と労働契約で決まるため、採用の前に方針を決めておきましょう。
賃金の記録
雇用主は賃金台帳を備え、5年間保存します。賃金を払うときは、各項目の計算方法の明細も渡します(第23条)。出勤の記録も5年間保存します(第30条)。これらの記録を作る事務の費用(給与計算の外部委託など)も、見積もりの「その他」に入れておくと漏れがありません。
関連ガイド
参考資料
- ジェトロ「台湾 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」https://www.jetro.go.jp/world/asia/tw/invest_05.html (閲覧日 2026-10-23:最低賃金)
- 労働部労工保険局 https://www.bli.gov.tw/ (保険料計算の確認先、本稿で料率未記載)
- 全国法規資料庫「勞動基準法」第21条・第23条・第24条・第30条・第32条・第36条・第38条・第39条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=N0030001 (閲覧日 2026-10-23)
- 全国法規資料庫「勞動基準法施行細則」第10条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=N0030002 (閲覧日 2026-10-23)
- 全国法規資料庫「勞工退休金條例」第6条・第14条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=N0030020 (閲覧日 2026-10-23)
- 全国法規資料庫「勞工職業災害保險及保護法」第6条 https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=N0050031 (閲覧日 2026-10-23)
- 労働部 最低賃金公告(2026年1月1日適用)https://www.mol.gov.tw/ (閲覧日 2026-10-23)
內部編輯附錄
不寫薪資行情數字(未取得資料→not_obtained)。 - 2026-10-23 擴寫:新增段落依「参考資料」所列官方頁內容撰寫,未加入無出處之數字。