台湾の移転価格税制|移転価格報告の内容・調査から1か月以内の提示・事前確認(APA)は交易総額5億元以上
税務調査の書面から1か月以内に移転価格報告を提示。延長は1回、最長1か月。
日本の親会社が台湾の子会社と取引する場合、その価格が第三者との取引価格と同じ水準かどうかは、台湾の税務当局が確認する対象です。台湾の「営利事業所得税不合常規移転価格査核準則」は、関係人との間の取引(受控交易)について、報告書の準備、提出の期限、調整、罰則を定めています。この記事では、準則(2020年12月28日修正)の条文にもとづいて、日本企業が確認する点を整理します。具体的な金額による免除の基準は、財政部の令に定められており、本稿では条文が参照する範囲にとどめます。
受控交易と関係人
準則第4条は、関係人を、関係企業(相互に従属または支配の関係にある営利事業)と、一定の関係にある人(董事、総経理およびその配偶者や2親等以内の親族など)と定めています。受控交易は、関係人の相互間で行う取引です。非関係人との間の取引は、未受控交易と呼ばれ、価格の比較の基準になります。
日本の親会社と台湾の子会社は、一般に、従属または支配の関係にあるため、両者の取引が受控交易の対象になり得ます。
移転価格報告に含める内容
準則第22条第1項は、受控交易を行う営利事業が、その年度の所得税の結算または決算の申報のときに、移転価格報告を準備しておくよう求めています。報告書には、少なくとも次の内容を含めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業の概観 | 沿革、事業活動と戦略、産業・経済の分析、主要な競合 |
| 企業集団の組織・管理構造 | 組織図、董事・監察人・経理人の名簿など |
| 受控交易の概要 | 取引の類型、当事者、国・地域ごとの金額、集団内の重要な契約書の写し |
| 受控交易の分析 | 機能とリスクの分析、比較可能性の分析、最適な常規交易方法の選定、常規交易の範囲 |
| 公司法第369条の12の報告書 | 関係報告書、関係企業の合併営業報告書など |
| その他 | 価格に影響する関係人・受控交易の文書 |
営利事業の年間の収入総額と受控交易金額が、財政部の定める標準以下のときは、報告書の代わりに、価格が常規交易の結果に合っていることを示す他の文書(替代文据)を使えます(同条第3項)。
税務当局の調査と提示の期限
準則第22条第4項は、税務当局が調査を行うとき、営利事業は、書面の調査通知が届いた日から1か月以内に、報告書または替代文据を提示すると定めています。やむを得ない事情で間に合わない場合は、期限の満了前に延期を申請します。延長は最長1か月で、1回に限られます。
当局が報告書を審査して、さらに裏付けの資料が必要と認める場合は、営利事業は1か月以内に提供します。提出する報告書や替代文据には、目録と索引を付けます。外国語の資料には中国語訳を付けます。ただし、当局が英語版の提示を認めた場合は、この限りではありません(同条第5項)。
国別報告
準則第22条の1第1項は、台湾にある営利事業が多国籍企業集団の最終親会社である場合、その集団のその年度の国別報告を作り、会計年度の終了後1年以内に、所在地の税務当局に送ると定めています。最終親会社が台湾の外にある場合は、次の3つのいずれかに当たるときに、台湾にある集団の構成員が送ります(同条第2項)。
- 最終親会社の居住国の法令で、国別報告の申報が不要。
- 最終親会社は居住国に申報するが、居住国と台湾の間で、国別報告の情報交換ができる協定が、送交の期限までに発効していない。
- 協定は発効しているが、税務当局が実際には国別報告を入手できない。
日本の企業集団の台湾子会社は、これらのいずれかに当たらなければ、国別報告を台湾で送る義務の対象になりません。日台間の情報交換の枠組みが、どの類型に当たるかは、本稿では確認していません。
また、台湾にある営利事業が属する企業集団の前年度の合併収入総額が、財政部の定める標準に満たない場合は、第1項、第2項などの送交が免除されます(同条第6項)。標準の金額は、本稿では確認していません。
事前確認(APA)
準則第23条は、関係人と取引する営利事業が、税務当局に事前確認(預先価格協議)を申請できる条件を定めています。申請する取引の総額が5億元以上、または年間の取引金額が2億元以上であることが条件の1つです。
報告書を提示しなかった場合
準則第33条は、税務当局が調査で、次のように扱うと定めています。
- 報告書または替代文据を提示した場合:当局は準則に従って常規交易の結果を決め、納税義務者の所得額を決めます。
- 提示しない、または提示できない場合:当局は、調べた資料にもとづいて決めることができます。資料がない場合で、提示されなかった文書が所得額の計算に関わる収入・原価・費用のときは、所得税法第83条と施行細則第81条により、同業利潤標準で決めることができます。
- 提示すべき資料が所得額に関わるのに提示しない場合:税捐稽徵法第46条によって扱うことができます。
準則第34条は、移転価格の調整後、一定の具体的な短漏報があると、所得税法第110条によって処理することができると定めています。次の場合などが挙げられています。
- 受控交易の申報価格が、当局の決めた常規価格の2倍以上、または50%以下。
- 調整で増えた所得額が、決定された全年の所得額の10%以上で、かつ営業収入の純額の3%以上。
- 移転価格報告を提示せず、他の文書でも常規交易の結果を証明できない。
所得税法第110条第1項は、漏れた税額の2倍以下の罰金と定めています。
手順
- 台湾子会社と日本本社などの関係人との取引を、受控交易として一覧にする。
- 取引ごとに、機能・リスクの分析と、比較可能な取引の資料を整理する。
- 年度の所得税の申告までに、移転価格報告を準備する。免除の基準額に当たる場合は、替代文据を準備する。
- 国別報告の義務があるかを確認する(最終親会社が台湾の外なら第22条の1第2項の3類型、集団の前年度の収入総額が標準に満たなければ免除)。
- 税務当局の調査の通知が届いたら、書面が届いた日から1か月以内に提示する。難しければ期限の前に延期を申請する。
- 外国語の資料には、中国語訳を付ける。
注意点
- 報告書を免除される金額の基準は、財政部の令で定められます。令の最新の内容は、申告の前に財政部の公告で確認します。
- 国別報告の条件は、最終親会社の居住国との協定の状況と、集団の収入総額で決まります。
- 事前確認の申請にはほかにも要件があります(第23条)。
- 本稿は条文の整理です。個別の取引の価格の妥当性を判断するものではありません。
よくある質問
台湾の税務調査で移転価格報告を求められたら、いつまでに出しますか。
書面の調査通知が届いた日から1か月以内です。延長は期限の前に申請すれば最長1か月で、1回に限ります(準則第22条第4項)。
報告書は日本語でもよいですか。
外国語の資料には中国語訳を付けます。当局が英語版の提示を認めた場合は、英語版でよいとされています(準則第22条第5項)。
事前確認(APA)はどんな取引が対象ですか。
申請する取引の総額が5億元以上、または年間の取引金額が2億元以上であることが条件の1つです(準則第23条)。
報告書を出さなかったら、どうなりますか。
当局は調べた資料で決めます。具体的な短漏報があれば、所得税法第110条による罰金が科されることがあります(準則第33条、第34条)。
出典
- 全國法規資料庫「營利事業所得稅不合常規移轉訂價查核準則」第4・22・22-1・23條(2026-10-17 查證):營利事業應於稽徵機關書面調查函送達之日起一個月內提示。
- 全國法規資料庫「營利事業所得稅不合常規移轉訂價查核準則」第33・34條、「所得稅法」第110條(2026-10-17 查證):處以所漏稅額二倍以下之罰鍰。