台湾への出張者の税務|短期滞在の課税関係を3つの物差しで確認(国内法90日・取決め183日・PE判定)
出張者の課税は、国内法の90日、取決めの183日、PEの183日の3つの物差しで判定する。
日本の社員が台湾へ短期間出張するとき、台湾で給与に税がかかるのか、会社に台湾の法人税の問題が起きるのかを、事前に確認する必要があります。台湾の税務には、滞在日数に関する判定が複数あり、それぞれ数え方が違います。この記事では、台湾の所得税法、日台民間租税取決め、各類所得扣繳率標準の条文にもとづいて、出張者の課税関係を、3つの物差しに分けて整理します。個別の案件の結論は、事実関係によるため扱いません。
物差し1:台湾の国内法の90日(所得税法第8条)
所得税法第8条第3号は、台湾内で提供した労務の報酬を、台湾源泉の所得としています。ただし、非居住者(台湾に居住しない個人)が、1課税年度に台湾内で居留した日数が合計90日を超えず、台湾外の雇用主から得た報酬は、台湾源泉の所得に含まれません。
この物差しは、台湾内の居留が1課税年度で90日以内かどうかを見ます。居住者の判定(1課税年度に183日以上居留すると居住者)は、所得税法第7条にあります。
物差し2:日台取決めの183日と3条件(取決め第15条)
取決め第15条第2項は、日本の居住者が台湾内で行う勤務の報酬を、次の3つをすべて満たす場合に、日本でのみ課税できるとしています。
- その暦年に開始または終了するいずれの12か月でも、台湾内の滞在が合計183日を超えないこと。
- 報酬が、台湾の居住者でない雇用者から支払われること。
- 報酬が、台湾内の雇用者の恒久的施設または固定的施設によって負担されないこと。
国内法の物差しと違い、12か月の期間を、暦年に開始または終了するもので数える点が特徴です。
物差し3:PEの判定(取決め第5条)
取決め第5条第3項第2号は、企業が、使用人などを通じて行う役務の提供(コンサルタントを含む)について、単一または関連するプロジェクトで、課税年度に開始または終了するいずれかの12か月の間に、合計183日を超えて一方の地域内で行われる場合は、恒久的施設に当たると定めています。
また、第5条第5項は、企業に代わって行動する人が、台湾内で、日本企業の名で契約を結ぶ権限を持ち、反復して行使する場合は、その活動について、PEを持つものとされると定めています。ただし、第4項の準備的・補助的な活動だけの場合は除かれます。
台湾にPEが認められると、第7条により、台湾は、そのPEに帰せられる利得に課税できます。
源泉徴収の率
台湾の会社が、非居住者に給与を払う場合、各類所得扣繳率標準第3条により、原則として18%を源泉徴収します。個人で、全月の給与総額が、行政院が定める基本工資の1.5倍以下なら、6%です。
3つの物差しの比較
| 物差し | 根拠 | 日数 | 数え方 |
|---|---|---|---|
| 国内法(台湾源泉の所得の判定) | 所得税法第8条第3号 | 90日以内 | 1課税年度の台湾内の居留 |
| 取決めの給与所得 | 取決め第15条第2項 | 183日以内(ほか2条件) | 暦年に開始または終了するいずれの12か月 |
| 取決めのPE(役務提供) | 取決め第5条第3項第2号 | 183日超でPE | 課税年度に開始または終了するいずれかの12か月、プロジェクトごと |
手順
- 出張者の台湾での滞在日数を、日付ごとに記録する。
- 1課税年度の台湾内の居留が90日を超えるか確認する。
- 暦年に開始または終了するいずれの12か月でも、滞在が183日を超えないかを確認する。
- 給与を払う雇用者が台湾の居住者でないか、台湾内の施設が報酬を負担していないかを確認する。
- 同じプロジェクトでの役務の提供が、12か月の間に合計183日を超えないかを確認する。
- 台湾内で契約を結ぶ権限を持つ人が出張者にいないかを確認する。
- 台湾で源泉徴収された場合は、日本側の外国税額控除で調整する。
注意点
- 日数の数え方は、物差しごとに違います。同じ出張でも、結論が分かれる可能性があります。
- 国内法の90日は、台湾外の雇用主から報酬を得る場合の判定です。
- PEの判定は、個人の給与ではなく、企業の台湾での事業が対象です。
- 取決めの適用手続きは、この記事では扱いません。
よくある質問
台湾に出張した社員の給与は、台湾で課税されますか。
取決め第15条の3条件をすべて満たせば、日本のみで課税されます。国内法の90日の判定も、台湾外の雇用主から報酬を得る非居住者について、別に定めています。
出張が長引いて、183日を超えたらどうなりますか。
給与は、取決めの3条件の1つを満たさなくなります。役務の提供が同じプロジェクトなら、会社の台湾のPEの問題も生じ得ます。
PEと給与の183日は同じ数え方ですか。
違います。給与は暦年に開始または終了する12か月、PEは課税年度に開始または終了する12か月でプロジェクトごとです。
台湾で源泉徴収されたら、日本で戻りますか。
日本の居住者が台湾で課された税は、取決め第22条により、日本の租税から控除されます。
出典
- 全國法規資料庫「所得稅法」第7・8條(2026-10-17 查證):於一課稅年度內在中華民國境內居留合計不超過九十天者。
- 日本台湾交流協会掲載「日台民間租税取決め」(和文)第5条・第15条・第22条(2026-10-17 確認):合計183日を超えないこと。
- 全國法規資料庫「各類所得扣繳率標準」第3條(2026-10-17 查證):薪資按給付額扣取百分之十八。