台湾の企業買収と合併|企業併購法の株主総会決議・債権者の異議30日・反対株主の買取請求
企業併購法は株式会社が対象。株主が複数なら合併の総会は3分の2以上の出席、債権者の異議期間は30日以上。
台湾の会社を買収する、または台湾の会社と合併する日本企業が、最初に参照するのは「企業併購法」です。この法律は、会社法の通常の手続きに加えて、合併・収購・株式交換・分割という4つの類型について、決議の要件、債権者保護、反対株主の権利を定めています。ここでは、条文にもとづいて、類型ごとの違いと日本側が押さえる点を整理します。個別案件の価格や税務は扱いません。
対象は株式会社
企業併購法第4条は、この法律でいう「会社」を、会社法にもとづいて設立された株式会社と定義しています。したがって、有限公司や、台湾にある外国会社の支店は、この法律の「会社」には当たりません。併購は、会社の合併・収購・分割を指すと定義され、株式交換は別の定義として置かれています。
| 類型 | 条文の定義(要旨) |
|---|---|
| 合併 | 参加会社の全部が消滅して新設会社が権利義務を包括承継する方式、または一方が存続して消滅会社の権利義務を包括承継する方式 |
| 収購 | 会社が、他社の株式、営業、財産を、株式・現金・その他の財産を対価として取得すること |
| 株式交換 | 会社が発行済株式の全部を他社に譲渡し、他社が株式・現金・その他の財産を株主に支払うこと |
| 分割 | 独立して営業できる一部または全部の営業を、既存または新設の他社に譲渡し、対価を会社またはその株主に支払うこと |
合併の決議と手続き
公司法第128条の1第1項は、政府または法人の株主1人だけで組織する股份有限公司には、株主総会に関する規定を適用せず、株主総会の職権を董事会が行使すると定めています。日本の親会社の100%子会社が、この「法人股東1人」の公司に当たるかは、条文だけでは判断できません。以下の株主総会の決議の要件は、株主が複数の場合の整理です。
株主総会の決議。 第18条第1項は、合併または解散の決議について、発行済株式総数の3分の2以上を代表する株主の出席と、出席株主の議決権の過半数の同意を要件としています。公開発行会社は、出席が足りないときに、発行済株式総数の過半数の出席と、出席株主の議決権の3分の2以上の同意で足りる軽減要件があります(第18条第2項)。定款でより高い要件を定めたときは、定款が優先します。
取締役会決議で足りる場合。 存続会社が合併のために発行する新株が、存続会社の議決権株式総数の20%を超えない場合、または消滅会社の株主に交付する対価の総額が存続会社の純資産の20%を超えない場合は、取締役会の決議(3分の2以上の出席、出席取締役の過半数)で合併契約を作成できます。ただし、消滅会社の資産が負債を弁済するのに足りないおそれがある場合や、存続会社が定款変更を要する場合は、株主総会の決議が必要です(第18条第7項)。
親会社と90%子会社の簡易合併。 会社が、発行済株式の90%以上を持つ子会社を合併する場合は、各社の取締役会の決議で足りる簡易な手続きが認められます(第19条)。子会社は、決議後10日以内に公告し、株主に通知します。株主が書面で異議を述べる期間は30日以上です。
合併契約の記載事項。 第22条は、書面による合併契約に、参加会社の名称と資本額、発行する株式や現金など対価の数量、配分の方法と比率、定款の変更事項などを記載するよう求めています。この記載事項は、合併を決議する株主総会の招集通知とともに、株主へ送ります。外国会社との合併にも、準用されます。
債権者保護。 第23条は、合併の決議後、会社が債権者に個別に通知し、公告して、30日以上の期限を指定し、期限内に異議を述べられるようにするよう求めています。通知・公告を怠った場合や、異議を述べた債権者に弁済や担保の提供をしない場合は、債権者に対して合併を対抗できません。
効果。 消滅した会社の権利義務は、存続会社または新設会社が包括承継します。訴訟などの手続きも承継されます(第24条)。
収購・株式交換のポイント
収購(営業譲渡・包括承継)は、第27条により、発行済株式総数の3分の2以上を代表する株主の出席と、出席株主の議決権の過半数の同意を要件とします。公開発行会社には、合併と同様の軽減要件があります。決議後、債権者へ個別に通知・公告し、30日以上の異議期間を設けます。
株式交換は、第29条により、株主総会で発行済株式総数の3分の2以上を代表する株主の出席と、出席株主の議決権の過半数の同意を要件とします。買収される会社は、100%子会社になります。
公開発行会社の株式を取得する側には、報告義務もあります。併購の目的で、公開発行会社の発行済株式総数の10%を超えて取得したときは、取得後10日以内に、併購の目的と所定の事項を証券主管機関へ申告します(第27条)。この申告をしなかった場合、10%を超える議決権株式の部分には、議決権がありません。
反対株主の買取請求
第12条は、合併・収購・株式交換・分割などの併購で、一定の反対株主が、会社に対して、当時の公正な価格での買取りを請求できると定めています。株主総会の前または総会中に、書面または記録された口頭で異議を表明し、反対の投票または議決権の放棄をしていることが要件です。請求は、株主総会の決議日から20日以内に、書面で、請求する価格と株券の預託証明を示して行います。
価格について合意できたときは、会社は決議日から90日以内に代金を支払います。決議日から60日以内に合意できなければ、会社はその後30日以内に、裁判所へ価格の決定を申し立てます。
公平交易法の結合申告
併購は、公平交易法でいう「結合」にも当たり得ます。第10条は、他の事業との合併、他事業の議決権株式または資本総額の3分の1以上の取得、営業や財産の全部または主要部分の譲受けなどを、結合と定義しています。第11条は、結合によって市場占有率が3分の1に達する場合などに、事前の申告を求めています。主管機関が完全な申告資料を受理した日から30営業日は、結合できません(延長の場合は最長60営業日)。
手順
- 対象の台湾の会社が株式会社かどうかを、登記で確認する。有限公司は企業併購法の対象外。
- 類型(合併・収購・株式交換・分割)を決める。
- 取締役会で併購の計画を決議する。公開発行会社は、特別委員会などによる審議を経る(第6条)。
- 合併契約や株式交換契約を作成し、株主総会の招集通知とともに株主に送る。
- 株主が複数の場合は、株主総会で、3分の2以上の出席などの要件を満たして決議する。法人株主1人の場合は、公司法第128条の1により、董事会が職権を行使する。
- 決議後、債権者に個別に通知・公告し、30日以上の異議期間を置く。
- 公開発行会社の株式を10%を超えて取得する場合は、10日以内に申告する。
- 市場占有率などの条件を満たす場合は、公平交易法の結合申告を済ませてから実行する。
注意点
- 本稿は条文の整理です。投資審議や外資の許可など、外国投資に関する手続きは別に確認します。
- 特別決議の割合は、定款でより高く定められていることがあります。
- 税務上の取り扱い(合併・分割の課税など)は、この記事の調査範囲に入れていません。
- 公平交易法の売上高の基準額は、主管機関が公告します。金額そのものは調べていません。
よくある質問
台湾の有限公司も企業併購法の対象ですか。
企業併購法は、会社を株式会社と定義しています(第4条)。有限公司は含まれません。
合併の決議に必要な株主の割合は。
株主が複数の場合は、発行済株式総数の3分の2以上の出席と、出席株主の議決権の過半数の同意です(第18条第1項)。法人株主1人の公司には、株主総会の規定が適用されません(公司法第128条の1)。
債権者はどのくらいの期間、異議を述べられますか。
会社が指定する期限は30日以上です(第23条)。
反対する株主は、株式を買い取ってもらえますか。
一定の条件を満たす反対株主は、決議日から20日以内に書面で、公正な価格での買取りを請求できます(第12条)。
出典
- 全國法規資料庫「企業併購法」第4・12・18・19・22・23・27・29條(2026-10-17 查證):應有代表已發行股份總數三分之二以上股東之出席。
- 全國法規資料庫「公平交易法」第10・11條(2026-10-17 查證):事業結合時,有下列情形之一者,應先向主管機關提出申報。