日台租税取決めの恒久的施設(PE)|工事は6か月超、役務提供は12か月間に183日超、代理人PEと独立代理人の除外
工事は6か月超、役務提供は12か月間に183日超でPE。契約締結権限を反復して行使する代理人もPE。
日本企業が台湾で事業を行うとき、その台湾での活動が「恒久的施設(PE)」に当たるかどうかで、台湾が日本企業の利得に課税できるかが決まります。日台民間租税取決めの第5条と第7条は、PEの範囲と、PEに帰せられる利得への課税を定めています。この記事では、取決めの和文条文にもとづいて、PEになる場合、PEにならない活動、代理人を通じた事業を整理します。個別の案件の判定は、事実関係によるため扱いません。
取決めの位置づけ
日台の取決めは、2015年11月26日に、交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)の間で結ばれた民間取決めです。国税庁は、この取決めが日本国が締結した国際約束(条約・協定等)ではないと注記しています。2017年1月1日から日本側の協会は日本台湾交流協会に、2017年5月17日から台湾側の協会は台湾日本関係協会に名称が変わりました。取決めの前文は、第1条から第29条までに規定する事項を実施するために、それぞれの地域の関係当局の同意を得るよう、相互に協力するとしています。
PEの基本の定義(第5条第1項・第2項)
第5条第1項は、PEを、事業を行う一定の場所であって、企業がその事業の全部または一部を行っているものと定義しています。
第2項は、PEに含まれるものの例を挙げています。
- 事業の管理の場所
- 支店
- 事務所
- 工場
- 作業場
- 鉱山、石油や天然ガスの坑井、採石場など、天然資源を採取する場所
工事・役務提供によるPE(第5条第3項)
第3項は、次のものもPEに含まれると定めています。
| 活動 | PEになる条件 |
|---|---|
| 建築工事現場、建設・組立て・据付けの工事、関連する監督活動 | その現場・工事・活動が6か月を超える期間続く場合に限る |
| 企業が行う役務の提供(コンサルタントを含む)で、その企業が採用した使用人などを通じて行うもの | 単一または関連するプロジェクトについて、課税年度に開始または終了するいずれかの12か月の間に、合計183日を超える期間、一方の地域内で行われる場合に限る |
つまり、日本企業が台湾に人を送って役務を提供する場合、同じまたは関連するプロジェクトで、台湾にいる期間の合計が、12か月の間に183日を超えると、PEとして課税される可能性があります。
PEにならない活動(第5条第4項)
第1項から第3項にかかわらず、次の活動だけを目的とする場合は、PEにならないと定められています。
- 企業の物品・商品の保管、展示、引渡しのためだけに施設を使うこと。
- 企業の物品・商品の在庫を、保管、展示、引渡しのためだけに保有すること。
- 企業の在庫を、他の企業による加工のためだけに保有すること。
- 企業のために物品・商品を購入し、または情報を収集することだけを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
- 企業のために、その他の準備的または補助的な性格の活動を行うことだけを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
- 上記の活動を組み合わせたものだけを目的とすること(組合せの全体が準備的・補助的な性格の場合に限る)。
代理人によるPE(第5条第5項・第6項)
第5項は、企業に代わって行動する人(独立の地位を有する代理人を除く)が、一方の地域内で、その企業の名において契約を結ぶ権限を持ち、この権限を反復して行使する場合に、その企業はその人が行う全ての活動について、そこにPEを持つものとされると定めています。ただし、その人の活動が、第4項に挙げた準備的・補助的な活動だけの場合は除かれます。
第6項は、企業が、通常の方法で業務を行う仲立人、問屋、その他の独立の地位を有する代理人を通じて事業を行っているという理由だけでは、PEを持つものとされないと定めています。
第7項は、一方の地域の法人が、他方の地域の法人を支配し、または支配されているという事実だけでは、いずれの法人も、他方の法人のPEにならないと定めています。
PEがある場合の課税(第7条)
第7条第1項は、一方の地域の企業の利得には、その企業が他方の地域内のPEを通じて事業を行わない限り、その一方の地域でのみ課税できると定めています。PEを通じて事業を行う場合は、そのPEに帰せられる部分の利得に限り、他方の地域で課税できます。
PEに帰せられる利得は、そのPEが、同じまたは類似の条件で同じまたは類似の活動を行う独立した企業であったとしたら得たとみられる利得です(第7条第2項)。PEの利得の決定では、PEのために生じた経営費や一般管理費などの費用を、控除できます(同条第3項)。
手順
- 台湾での活動が、事業を行う一定の場所(事務所、工場、倉庫など)を使うものかを整理する。
- 工事や据付けの場合は、現場や活動が6か月を超えるかを確認する。
- 役務の提供の場合は、プロジェクトごとに、台湾にいる日数を12か月の期間で合計し、183日を超えるかを確認する。
- 台湾の代理人が、日本企業の名で契約を結ぶ権限を持ち、反復して行使していないかを確認する。
- 代理人が独立の地位を有し、通常の方法で業務を行う場合は、第6項により、それだけではPEにならない点を確認する。
- PEがある場合は、そのPEに帰せられる利得を計算する。
注意点
- 183日の期間は、課税年度に開始または終了するいずれの12か月でも判定します。暦年だけではありません。
- 準備的・補助的な活動かどうかは、活動の実態によります。
- 本稿は取決めの和文の条文の整理です。台湾の国内法での適用の手続きは、別に確認します。
- 取決めの効力発生と適用開始の時期は、概要の記事で整理しています。
よくある質問
台湾に建設現場を持つと、いつPEになりますか。
現場・工事・活動が6か月を超える期間続く場合です(取決め第5条第3項)。
日本から台湾へ人を送ってコンサルティングを行うとき、PEになりますか。
同じまたは関連するプロジェクトで、台湾で役務を行う期間が、課税年度に開始または終了するいずれかの12か月の間に合計183日を超える場合です。
台湾の販売代理店は、PEになりますか。
独立の地位を有し、通常の方法で業務を行う代理人は、その事実だけでは、PEになりません(第5条第6項)。日本企業の名で契約を結ぶ権限を持って反復して行使する代理人は、PEの扱いになります(同条第5項)。
台湾子会社は、日本の親会社のPEになりますか。
子会社であり、支配関係があるという事実だけでは、PEになりません(第5条第7項)。
出典
- 日本台湾交流協会掲載「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(和文)第5条(2026-10-17 確認):当該一方の地域内において行われる場合に限る。
- 国税庁「日台民間租税取決めに定める相互協議手続について」(2026-10-17 確認):日台民間租税取決めは…日本国が締結した国際約束(条約・協定等)ではありません。