日台民間租税取決めの概要|29条の構成・対象税目・配当利子使用料10%の仕組み
日台の租税取決めは全29条。配当・利子・使用料の源泉地税率は10%が上限。
日本と台湾の間には国同士の租税条約がありません。代わりに、交流協会(現在の日本台湾交流協会)と亜東関係協会(現在の台湾日本関係協会)が2015年11月26日に署名した「日台民間租税取決め」が、二重課税を避ける枠組みとして働いています。全29条で、配当・利子・使用料の源泉地での税率は10%を上限とし、事業利得は恒久的施設(PE)がなければ相手側では課税されません。台湾に子会社や支店を置く日本企業が最初に押さえるべき全体像を、原文の条番号で整理します。
民間取決めであることの意味
国税庁は、この取決めが民間機関同士の取決めであり、日本国が締結した国際約束(条約・協定等)ではないと注記しています。日本国内では、2016年度税制改正で「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」が整備され、2017年1月1日から施行されました。これによって、条約に相当する枠組みが国内法として働くようになりました。国税庁のページによれば、取決めは2016年6月に発効しています。
取決め第28条は、効力が生じた年の翌年1月1日以後の課税年度などに適用すると定めます。そのため、実際に台湾側で源泉徴収される所得への適用は2017年1月1日以後に支払われる所得から、日本側の所得税・法人税は2017年1月1日以後に開始する課税年度からです。なお2017年には、日本側の窓口が日本台湾交流協会へ、台湾側が台湾日本関係協会へ名称変更されています。
対象となる税目
第2条は、取決めが適用される税目を次のように列挙しています。
| 地域 | 対象税目 |
|---|---|
| 日本 | 所得税、法人税、復興特別所得税、地方法人税、住民税 |
| 台湾 | 営利事業所得税、個人総合所得税、所得基本税(附加税を含む) |
台湾の営業税(VAT)は対象に含まれません。取決めは所得課税の二重課税を避ける枠組みであり、消費課税や印紙税は別の話です。
主要な条文と上限
| 条 | 内容 | 日台間のルール |
|---|---|---|
| 第5条 | 恒久的施設(PE) | 支店、事務所、工場などを含む。建設現場は6か月超、役務提供は12か月中合計183日超でPEになる |
| 第7条 | 事業利得 | PEがなければ居住地側のみ課税。PEがある場合はPEに帰せられる利得のみ相手側で課税 |
| 第10条 | 配当 | 源泉地側の税は配当額の10%を超えない |
| 第11条 | 利子 | 源泉地側の税は利子額の10%を超えない。政府・中央銀行などは相手地域のみ課税 |
| 第12条 | 使用料 | 源泉地側の税は使用料額の10%を超えない |
| 第15条 | 給与所得 | 12か月中183日以下などの要件を満たせば居住地側のみ課税 |
| 第22条 | 二重課税の排除 | 日本は台湾で納付した税額を、台湾は日本で納付した税額を、それぞれ自国の税額から控除(控除額は、その所得に対応する自国の税額が上限) |
| 第24条 | 相互協議 | 最初の通知から3年以内に申立て |
| 第26条 | 減免の制限 | 取決めの特典を受けることが業務遂行の主たる目的の全部または一部である場合は適用外 |
相互協議と情報交換
取決めに適合しない課税を受けた企業は、国内の救済手段とは別に、居住地の権限のある当局(日本は財務大臣、台湾は財政部長)に申立てができます。第24条1項は、申立てを課税措置の最初の通知の日から3年以内に行うよう定めます。国税庁は、この手続の取扱いを事務運営指針として公表しています。
第25条は、両地域の権限ある当局間の情報交換を定め、受け取った情報は秘密として扱うとしています。第26条は、取決めの特典を受けることを主たる目的の全部または一部とする取引から生じる軽減・免除を認めないという、濫用防止規定です。
終了の可能性
第29条は、どちらの協会も、効力発生から5年が経過した後に開始する各暦年の末日の6か月前までに、相手側へ終了を通告できると定めています。通告が行われた場合、第29条2項により、通告の翌年1月1日以後の所得などから適用が止まります。実務では現行の効力を前提にしつつ、毎年、国税庁と財政部の最新の取扱いを確認します。
手順
- 台湾との取引ごとに、所得の種類(配当、利子、使用料、事業利得、給与)を分類する。
- 取引相手が台湾の居住者か、日本側の受益者が日本の居住者かを確認する。
- PEが生じる活動(支店、事務所、建設、役務提供の日数)がないかを点検する。
- 台湾側の源泉税率に、取決めの10%上限を適用できるか、台湾の手続を確認する。
- 日本側では、台湾で納めた税の外国税額控除(第22条)を申告書で検討する。
注意点
- 取決めは条約ではなく民間取決めです。国内法の整備を通じて効力があるため、国税庁のページと日本台湾交流協会の公表資料を併せて確認します。
- 10%は上限であり、台湾側の国内税率がそれより低い所得には適用の必要がありません。
- PEの有無は、契約書の名称ではなく、事業を行う一定の場所と活動の実態で判断されます。
- 営業税、関税、印紙税は取決めの対象外です。
よくある質問
日台租税協定は条約ですか。
条約ではありません。交流協会(現・日本台湾交流協会)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会)が2015年11月26日に署名した民間取決めで、日本では国内法の整備により実施されます。
配当・利子・使用料の税率はいくらですか。
第10条から第12条により、源泉地側の税はいずれも10%が上限です。
台湾に支店を置くとPEになりますか。
第5条は、支店・事務所・工場などをPEに含めています。PEを通じた事業利得は、PEに帰せられる部分に台湾で課税されます。
相互協議はいつまでに申し立てますか。
最初の通知の日から3年以内です。居住地の権限ある当局(日本は財務大臣、台湾は財政部長)に申し立てます。
出典
- 日本台湾交流協会「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(和文PDF)(2026-10-17 確認):配当の額の10パーセントを超えないものとする。
- 国税庁「日台民間租税取決めに定める相互協議手続について」(2026-10-17 確認):日本国が締結した国際約束(条約・協定等)ではありません。