日台租税取決めの給与所得|12か月間に183日以内・雇用者が台湾の居住者でない・PEが負担しない、3条件で日本のみ課税
12か月の間の滞在が183日以内、雇用者が台湾居住者でない、PEが負担しない、の3条件を満たせば日本のみ課税。
日本から台湾へ出張する社員や、短期の派遣社員の給与は、台湾でも課税されるのかが問題になります。台湾の所得税法は、給与の課税を、居住者かどうか、台湾に何日いたかで分けます。日台民間租税取決めの第15条は、これに加えて、日本の居住者が台湾で勤務した給与について、台湾が課税できない場合の条件を定めています。この記事では、取決めの和文条文にもとづいて、3つの条件、二重居住者の判定、役員報酬の扱いを整理します。台湾の国内法での居住者の判定は、別稿で扱っています。
原則(第15条第1項)
第15条第1項は、一方の地域の居住者が勤務について得る給料、賃金その他これらに類する報酬を、勤務がもう一方の地域内で行われない限り、その居住地のみで課税できると定めています。勤務がもう一方の地域内で行われる場合は、その報酬に対して、そのもう一方の地域でも課税できます。
つまり、日本の居住者が台湾内で勤務した場合、原則は、台湾でも給与に課税できます。
台湾で課税されない3条件(第15条第2項)
第2項は、第1項にかかわらず、日本の居住者が台湾内で行う勤務について得る報酬は、次の3つの要件をすべて満たす場合に、日本でのみ課税できると定めています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (a) 滞在期間 | その暦年に開始または終了するいずれの12か月の期間でも、報酬の受領者が台湾内に滞在する期間が合計183日を超えないこと |
| (b) 雇用者 | 報酬が、台湾の居住者でない雇用者(またはこれに代わる者)から支払われること |
| (c) 負担者 | 報酬が、台湾内に雇用者が持つ恒久的施設または固定的施設によって負担されるものでないこと |
3つのうち1つでも満たさない場合は、第1項の原則に戻り、台湾でも課税できます。
出向の場合などは、雇用者がだれか、報酬の費用をだれが負担するかによって、(b)と(c)の当てはめが変わります。個別の事実関係で判断が必要です。
183日の数え方
(a)は、その暦年に開始または終了するいずれの12か月の期間でも合計183日を超えないことを求めています。暦年の1月から12月だけで数える方法とは違います。たとえば、2025年7月から2026年6月の12か月の中で、台湾に滞在した日数が183日を超えると、(a)を満たさなくなります(この数え方の例は、本稿の整理です)。
台湾の所得税法の居住者の判定(1課税年度に183日以上居留すると居住者)とは、数え方が異なります。台湾の国内法では、非居住者が、1課税年度に台湾内での居留が合計90日を超えず、台湾外の雇用主から報酬を得る場合は、台湾源泉の所得に含まれません(所得税法第8条第3号)。
役員報酬(第16条)
第16条は、一方の地域の居住者が、もう一方の地域の居住者である法人の役員の資格で得る役員報酬などについて、そのもう一方の地域で課税できると定めています。台湾子会社の董事を兼ねる日本の社員の役員報酬は、第15条の3条件とは別に、台湾で課税され得ます。
居住者が双方になる場合(第4条)
第4条は、個人が日本と台湾の双方の居住者に当たる場合の判定を、次の順で定めています。
- 恒久的住居がある地域の居住者とみなす。双方にある場合は、人的・経済的関係がより密接な地域(重要な利害関係の中心がある地域)の居住者とみなす。
- 重要な利害関係の中心を決められない場合や、恒久的住居がどちらにもない場合は、常用の住居がある地域の居住者とみなす。
- 常用の住居が双方にある、またはどちらにもない場合は、国民または市民である地域の居住者とみなす。
どの基準でも決まらない場合は、取決めによる租税の軽減や免除を受けられません。
二重課税の排除(第22条)
第22条第1項は、日本の居住者が、取決めに従って台湾で課税される所得を台湾内で得た場合に、その所得について納付する台湾の租税の額を、日本の租税の額から控除すると定めています。控除の額は、日本の租税のうち、その所得に対応する部分を超えません。
手順
- 出張者や派遣社員の、日本での居住者としての地位を確認する。
- 台湾に滞在する日数を、日ごとに記録する。
- 暦年にかかわらず、連続する12か月の期間ごとに、台湾での滞在が183日を超えないかを確認する。
- 給与を払う雇用者が、台湾の居住者でないか、台湾の恒久的施設や固定的施設が費用を負担していないかを確認する。
- 3条件のどれかを満たさない場合は、台湾の源泉徴収などの手続きを確認する。
- 台湾で納めた税を、日本の申告で外国税額控除として扱う。
注意点
- 3条件は、すべて満たす必要があります。
- 183日の判定は、12か月の期間ごとに行います。
- 台湾子会社に出向する場合は、雇用者がだれか、費用をだれが負担するかが争点になり得ます。
- 取決めの適用手続きは、台湾側と日本側で異なります。本稿では扱いません。
よくある質問
台湾に出張した日本人社員の給与は、台湾で課税されますか。
3条件をすべて満たせば、日本でのみ課税されます(取決め第15条第2項)。満たさない場合は、台湾でも課税され得ます。
183日は、暦年で数えますか。
暦年に開始または終了するいずれの12か月の期間でも、合計183日を超えないことが求められています。
台湾の子会社の役員になった場合は。
役員報酬は、その子会社が居住者である地域で課税できます(第16条)。
日本と台湾の両方で居住者になったら、どちらが優先しますか。
第4条第3項が定める順(恒久的住居、利害関係の中心、常用の住居、国民または市民)で決めます。
出典
- 日本台湾交流協会掲載「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(和文)第4条・第15条・第16条・第22条(2026-10-17 確認):当該暦年において開始し、又は終了するいずれの12箇月の期間においても…合計183日を超えないこと。
- 全國法規資料庫「所得稅法」第8條(2026-10-17 查證):非中華民國境內居住之個人,於一課稅年度內在中華民國境內居留合計不超過九十天者,其自中華民國境外僱主所取得之勞務報酬不在此限。